
クマによる人身被害の多発などを受けて10月以降、各地でイベントの中止が相次いでいる。学校行事やマラソン大会、植樹ツアーなど種類はさまざまだが、いずれも周辺で目撃情報が寄せられたことから、取りやめを余儀なくされた。主催者側は「苦渋の決断」「安全が第一」と話している。
宮城県立仙台第一高(仙台市)は全校生徒や卒業生約950人が約35キロを歩き通す「強歩大会」を取りやめた。今年60回目の伝統行事でコロナ禍でも続けてきたが、蘓武康明教頭(55)は「生徒や保護者が楽しみにしており苦渋の決断だった。来年も同じ状況なら中止は避けられない」と困惑した様子で話した。
群馬県沼田市では小学校4校でマラソン大会を中止したほか、校外学習なども中止や内容変更となった。市教育委員会は20ある小中学校の保護者に児童生徒を車で送迎するよう求めた。
長野県飯田市教委などは「風越山トレイルマラソン大会」を取りやめた。全国から小学生や高齢者ら400人近くが参加予定だったが、同教委の後藤武志さん(55)は「ボランティアの警備員に鈴やラジオを持たせるなどの対策も考えたが、参加者らの安全担保は困難と判断した。安全な運営態勢を検討し、来年の開催につなげたい」と話した。
人的被害が深刻な秋田県。大仙市などは「旧池田氏庭園ハロウィンナイト」を中止した。担当者は「夜間でもあり、来場者の安全を第一に考えた。予約してくれた方々がいたのでとても残念」とつぶやいた。
北海道北斗市では、今月3日まで八郎沼公園で開催予定だった紅葉のライトアップが中止に。沼に映る紅葉が人気で昨年は約2万3000人が詰め掛けたが、市観光協会の松野憲哉事務局長(63)は「客らの安全が第一と考えた。来場者も増えていたので残念」と落胆した。
埼玉県秩父市では16日に予定していた植樹体験ツアーを中止した。親子連れなど30人ほどが参加予定だったが、広報担当の長江豊さん(69)は「全国で人身被害が多発し秩父でも出没情報がある。参加者の安全を守るため関係者と協議して中止を決めた」と肩を落とした。
【時事通信社】
〔写真説明〕民家近くに出没したクマ=10月30日、秋田市
2025年11月05日 07時05分