
【ニューヨーク時事】米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収を巡る米ネットフリックスと米パラマウント・スカイダンスの争いでは、ワーナー傘下の報道ケーブルテレビ局、CNNの扱いが焦点だ。トランプ米大統領は、長年敵視しているリベラル系のCNNも買収対象に「含まれるべきだ」と主張。自身に好意的な報道姿勢に変えさせる狙いが透ける。
動画配信で世界最大手のネットフリックスは5日、ワーナーを720億ドル(約11兆円)で買収すると発表。ワーナーと同様に名門映画スタジオや動画配信、テレビ事業を手掛けるパラマウントは8日、これを上回る金額を提示して敵対的買収を始めたと明らかにした。
ネットフリックスは、経営戦略上のうまみが少ないCNNなどを買収対象に含めていないが、パラマウントは会社全体の獲得を計画。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、パラマウントのエリソン最高経営責任者(CEO)は最近、買収すればCNNを「抜本的に改革する」と、トランプ政権高官に売り込んでいる。
いずれの社が勝利しても、最終的な買収実現には米国などの当局から独占禁止法に抵触しないと承認される必要がある。エリソンCEOは、トランプ氏を長年支えてきた富豪の息子で、CNN改革をアピールすることにより、トランプ氏の支援を引き出す戦略とみられる。
トランプ氏は10日、記者団に対し、ワーナー買収で「CNNは売却されるべきだ」と述べた。CNNの経営陣は「腐敗しているか、無能だ」とののしり、「これ以上CNNの運営を任せるべきではない」と主張。パラマウント寄りの姿勢をにじませた。
トランプ氏によるパラマウント側への肩入れは、買収資金の出し手に娘婿クシュナー氏が率いる投資会社が加わっていることからもうかがえる。買収劇の行方は、米国の政治とメディアの関係に長期的な影響を残しそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕米パラマウント、ワーナー、ネットフリックス各社のロゴ(AFP時事)
2025年12月13日 20時30分