
中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射を受け、日本政府が中国の「不当性」を同盟・同志国に訴える働き掛けを強めている。高市早苗首相の台湾有事発言を巡る中国の情報戦に対抗する好機と捉えているからだ。関係者は一定の手応えを感じているが、トランプ米大統領が日本寄りの立場を明確にしていないのが懸念材料だ。
小泉進次郎防衛相は12日、ヘグセス米国防長官と電話で会談し、「中国の行動は地域の平和と安定に資するものではない」として「深刻な懸念」を共有。この後の記者会見で「国際社会にわが国の立場を適切に発信していく」と語った。
中国軍機によるレーダー照射が始まったのは6日午後4時半ごろ。小泉氏はそれから半日を待たず7日午前2時に緊急会見し、「危険な行為だ」と批判した。中国メディアが9日、中国軍は訓練を事前通知していたとする音声データを公開し、対領空侵犯措置を取った自衛隊側に問題があったと主張すると、小泉氏は10日の臨時会見で「十分な情報」は伝えられなかったと反論した。
小泉氏はヘグセス氏に加え、7日にオーストラリア国防相、10日にイタリア国防相、北大西洋条約機構(NATO)事務総長と意見交換し、日本の立場を説明。市川恵一国家安全保障局長は10日、ドイツ首相補佐官と電話会談した。
日本政府が攻勢に出ているのはレーダー照射を中国の明らかな「失策」(外務省幹部)とみているため。日中の情報戦が続く中、中国・ロシア軍の爆撃機の共同飛行と合わせ「中国は緊張を高めている」と訴えている。米国務省が9日に「中国の行動は地域の平和と安定に寄与しない」とのコメントを出すと、日本政府高官は「外交の成果だ」と語った。
ただ、日米防衛相会談後の両政府の発表には温度差も見られた。防衛省は「レーダー照射事案を含め意見交換した」としたが、米側はレーダー照射に触れず、「深刻な懸念」にも言及しなかった。
トランプ氏が沈黙を守っていることも気がかりだ。レビット米大統領報道官は11日の会見で「トランプ氏は中国とも良好な協力関係を築くべきだと考えている」と日中いずれにも肩入れを避けた。外務省筋は「米国の日本支持は明確だ」と力説するが、「予測不能」なトランプ氏だけに懸念はぬぐいきれないのが実情だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕ヘグセス米国防長官と電話会談する小泉進次郎防衛相=12日(同氏のXより)
2025年12月13日 20時31分