「生きていてほしかった」=現場で献花、犠牲者26人悼む―ビル放火4年・大阪



大阪市北区の雑居ビルに入る心療内科クリニックで院長や患者ら26人が死亡した放火殺人事件は17日、発生から4年を迎えた。「生きていてほしかった」。現場となったビル前では、朝から遺族や関係者らが犠牲者を悼み、祈りをささげた。

事件で亡くなった西村美夕璃さん=当時(21)=の幼稚園の担任だった女性(42)は、ビル前で手紙と一緒に花を手向けた。卒園式以来会っていなかったが、最近になって近況が気になり、ふとインターネットで調べてみると、事件に巻き込まれたことを知った。

「優しくて一生懸命で頑張り屋」だったという西村さんからは当時、女性の似顔絵を描いた手紙をたくさんもらった。女性は「大きくなった姿を見たかった」と涙ながらに話した。

クリニック院長の西沢弘太郎さん=当時(49)=の妹、伸子さん(48)は午前9時すぎにビルを訪れた。おにぎりや温かいお茶などを供えて線香を上げ、約10分間読経した。

パニック障害の治療のため4年ほどクリニックに通院していたという40代男性は、事件の風化を危惧し、毎年現場に足を運んでいる。西沢さんについて「大きな存在で、頼れるパートナーだった。悩んだ時に『無理しなくていい』と言ってくれた」と振り返った。

別の元患者の男性(44)も4年ほど通院し、西沢さんの診療を受けた。「先生は私の話を遮ることなく最後まで聞いてくれた。生きていてほしかった」と話し、黙とうした。

事件は2021年12月17日午前10時15分ごろ発生。ビル4階のクリニックが放火され、西沢さんや患者ら26人が犠牲となった。事件で死亡した谷本盛雄容疑者=当時(61)=は殺人容疑などで容疑者死亡のまま書類送検され、不起訴となった。

【時事通信社】 〔写真説明〕現場の雑居ビルの前で手を合わせる、亡くなったクリニック院長西沢弘太郎さんの妹伸子さん=17日午前、大阪市北区 〔写真説明〕現場の雑居ビルの前に置かれた花束=17日午前、大阪市北区

2025年12月17日 12時29分


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