
広告大手電通の新入社員だった高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺してから10年となるのを前に、母幸美さん(62)が24日、東京都内で記者会見し、「過労死の問題を決して風化させず、娘のことも忘れないでほしい」と訴えた。
幸美さんは10年間を振り返り、「娘に対する気持ちは何も変わらない」と涙を拭った。これまで講演を80回以上重ねたといい、「娘の過労死も、日本の過労死の問題も風化したのではないか。本当にどうしようという思いで過労死防止に努めてきた」と声を詰まらせた。
2018年6月に「働き方改革」関連法が成立し、残業時間に上限規制が設けられたが、今年10月に就任した高市早苗首相は労働時間の規制緩和検討を指示し、政府で議論されている。
幸美さんは「遺族が同じような人を生まないでほしいと活動してきたが、過労死は減っていない。本当に悲しく、言葉では表現できない」と現状を憂慮。「働き方改革を後退させるとしたら、私たち遺族は絶対に認めることができない。健康に働ける社会をつくる努力は、永遠にしていかないといけない」と力を込めた。
代理人の川人博弁護士は「過重労働の実態が広く共有されるようになった」としつつ、長時間労働やハラスメントなど課題は多いと述べた。規制緩和の動きには、「社会的な議論を行わなければならない」とくぎを刺した。
【時事通信社】
〔写真説明〕電通社員高橋まつりさんの過労自殺から10年を前に記者会見する母幸美さん=24日午後、東京・霞が関
〔写真説明〕電通社員高橋まつりさんの過労自殺から10年を前に記者会見する母幸美さん(手前)と代理人の川人博弁護士=24日午後、東京・霞が関
2025年12月24日 20時05分