動きだすタワマン住民=「在宅避難」、自助努力も―首都直下地震



首都直下地震の被害想定では、マンション高層階に住む居住者が停電や断水で「高層難民」となる可能性が指摘された。首都圏で増加するタワーマンションの中には、住民が音頭を取り、被災後も自宅にとどまる「在宅避難」に備える事例もある。

東京都港区の「芝浦アイランドケープタワー」は、2006年に竣工(しゅんこう)した地上48階建て、総戸数1095戸のタワマンだ。JR田町駅にほど近い、運河に囲まれた東京湾の埋め立て地にそびえ建つ。

住民らでつくる管理組合の中に、防災に関する理事会の諮問機関としてワーキングチームが15年に発足した。現在は管理組合の防災担当理事ら10人で構成。当初から参加していた女性(79)は、「住民目線で一から必要なものを積み上げていった」と振り返る。

住民アンケートなどを経て、17年にマニュアルが完成。揺れが収まった後、電気、ガス、水道の一つでも止まっていれば、住民は部屋のドアに安否を知らせるマグネットを張り、各階のエレベーターホール前に集合する。

その場で連絡係を決め、各フロアの備蓄倉庫に入っているトランシーバーで1階の災害対策本部とやりとりする。在宅避難の心得をまとめた文書を各戸に配布し、エレベーターが動くまで、在宅避難を続ける流れだ。

災害用の携帯トイレや水、食料品は「基本的には自助努力」だが、備蓄倉庫に1人3日分を用意。各戸30分ずつ、7日間スマートフォンの充電が可能な発電機も準備している。

11年の東日本大震災の際は、自宅にいて「ここで私は死ぬんだと思った」という女性。「自分が生き延びたいと思い、防災にのめりこんだ」と振り返る。毎年、防災訓練を行っているが、引っ越しなどで住民が入れ替わる中、いかに継続していくかが課題という。

不動産調査会社「東京カンテイ」によると、昨年12月時点の20階建て以上の分譲マンションは都内が497棟、約16万戸で全国最多。首都圏全体では812棟、約25万戸に上るという。

【時事通信社】 〔写真説明〕住民が在宅避難の準備に取り組んでいるタワーマンション=9月3日、東京都港区

2025年12月20日 07時16分


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