
【台北時事】台湾・台北市中心部の台北駅や繁華街で刃物などを持った男(27)=ビルから転落死=が通行人らを無差別に襲い、3人が死亡し、11人が重軽傷を負った事件から26日で1週間となった。最初の犠牲者は、犯行を止めようとした男性(57)だった。捨て身の行動は台湾人の心を揺さぶり、現場周辺の一角には多くの人が追悼に訪れ、メッセージを書いた紙や花をささげている。
台湾メディアによると、男性は台北市の証券会社に勤めていた余家昶さん。19日夕、近郊の桃園市に帰宅するため台北駅地下道を通った際、発煙弾や火炎瓶を投げる男を制止しようとして刺された。男は残りの発火物を使わず逃走した。余さんの妻は「普段から正義感が強かった」と夫を悼んだ。
台湾の祝日の25日、台北駅の事件現場近くで手を合わせた大学生、蔡奇霖さん(18)は「余さんが阻止しようとしなかったら事態は一層深刻だったかもしれないし、自分が同じ行動を取れたか分からない。とても感謝している」と語った。北東部・宜蘭県から娘と一緒に来た大学教員の黄資雅さん(45)も「多くの人に被害が及ばないようにした偉大な行為」とたたえた。
壁に貼られたメッセージには「英雄に感謝」といった文面が目立つが、複雑な心境の人もいる。南部・高雄市から来た公務員男性(41)は「余さんに敬服している」と断った上で、「こういう事件を阻止したい場合、まずは防具などで自分の身を守ることが必要だ」と指摘した。
一方、台北駅に続く2カ所目の襲撃現場で、2人が犠牲となった中山駅に近い繁華街でも、路上に献花が次々と置かれている。近郊の新北市から級友と共に訪れ、花を一輪手向けた女子中学生(13)は「街で突然殺されるなんて怖い」と語った。警察によれば、男の犯行は計画的とされるが、詳しい動機は分かっていない。
【時事通信社】
〔写真説明〕台北駅の襲撃事件現場近くで手を合わせる人ら=25日
〔写真説明〕花が手向けられた中山駅近くの襲撃現場=25日、台北
2025年12月27日 10時50分