
今回の衆院選は、主要政党の公約が消費税減税でそろう異例の構図となり、選挙後の実施も現実味を帯びる。しかし、巨額の税収減を伴うにもかかわらず、財源の議論は深まっていない上、景気浮揚効果を疑問視する声もある。このまま減税に突き進めば、日本の財政規律に対する金融市場からの信認が失墜し、さらなる金利や物価の高騰を招く恐れもある。
消費税は年金、医療、介護など社会保障の財源に充てると法律で規定され、2024年度の税収は約32兆円に上る。自民党と日本維新の会は2年間、中道改革連合は恒久的に食料品の税率0%を掲げるが、財務省の試算では約4.8兆円の税収が失われる。国民民主党と共産党が掲げる一律5%が実行されれば、税収減は約15.3兆円に達する。れいわ新選組や参政党は廃止を主張する。
「2年限定であれば、特例公債を発行しなくても手当てできる」。財源を巡り、高市早苗首相はこう強調した。党首討論会では「26年度内を目指したい」と実施時期にも踏み込んだ。ただ、詳細については「今後設置される『国民会議』で検討を加速する」との説明にとどまる。例示した租税特別措置や補助金見直しは、昨年末の税制改正議論でもガソリン・軽油の暫定税率廃止などの財源とされたが、期待された額は確保できていない。
対する中道は、政府保有資産の運用益を充てると訴えるが、「相場次第で運用実績も変わる。安定的な財源とは言い難い」(エコノミスト)との見方が多い。国民民主の玉木雄一郎代表も「ありとあらゆる財源を使う」と述べる程度で、各党とも具体像は示せていない。
経済効果への疑念もある。大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、食料品を0%にした場合の負担軽減は1世帯当たり年8.8万円と試算。個人消費の押し上げ効果はわずか0.5兆円程度で、「巨額の財政支出が必要な割に効果は小さい」と指摘する。首相は「給付付き税額控除」導入までの経過措置だと強調するが、一度税率を下げれば「戻せるかどうかわからない」(経済官庁幹部)との懸念もある。期限が先送りされ、なし崩し的に赤字国債に頼る未来が見え隠れする。
「見切り発車」の減税論に、市場はすぐさま反応した。首相の減税表明翌日の20日、長期金利は一時、27年ぶりに2.380%まで上昇した。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「『社会保障財源を守る』という節度が失われ、無節操な減税へと踏み出すあしき前例になる」と警鐘を鳴らしている。
【時事通信社】
〔写真説明〕2.275%まで上昇した長期金利を示すモニター=19日、東京都千代田区
2026年02月03日 07時07分