「経験生かしたい」=現場で応急処置、PTSDの男性―秋葉原殺傷、8日で18年



2008年6月に東京・秋葉原の歩行者天国で17人が殺傷された事件は8日、発生から18年となる。現場に居合わせ、被害者の応急処置に当たった愛知県豊明市の西村博章さん(41)は事件後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。今も現場を訪れると胸が苦しくなるが、「経験を生かしたい」と救命救急の重要性を訴えている。

理学療法士を目指し、筑波技術大(茨城県つくば市)の2年生だった西村さんは事件当日、1人で秋葉原を訪れていた。友人に頼まれた買い物を済ませて店を出ると人だかりが見え、近づくと、腰を刺されて出血した男性が倒れていた。とっさに普段から持ち歩いていたゴム手袋を取り出し、止血などを行った。

近くで同じように血を流して倒れていた女性の応急処置を行っていると、警察官から「脈も呼吸もない重傷者がいる」と声を掛けられた。胸を刺された男性があおむけに倒れており、駆け付けた医師らと交代で心臓マッサージなどを繰り返した。だが、男性の体は徐々に冷たくなっていく。搬送先の病院で亡くなったと、後で知った。

緊迫した状況に初めて遭遇し、重圧を感じたという西村さん。「心臓マッサージをする手の感覚が鈍くなり、視野が狭くなった。現実感がなくなったようだった」と振り返る。

事件後、大学でのネズミの解剖実習で事件現場を思い出して倒れた。その後も何度かフラッシュバックを起こし、事件から約1カ月後、PTSDと診断された。休学と復学を繰り返し、卒業まで6年かかった。

犠牲者の冥福を祈りたいとの思いが募るようになり、事件から6年がたったころから毎年現場を訪れるようになった。処方薬やカウンセリングで症状は緩和したが、事件現場に行くと今も胸が苦しくなる。

「つらい経験をしたからこそ、役立つことがあるかもしれない」。現在は福祉施設で働く傍ら、早稲田大の嘱託研究員として救命救急に関する研究を続ける。「できる範囲で経験を生かしていきたい」。8日を前に、そう力を込めた。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える福祉施設職員の西村博章さん=5日、東京都中央区 〔写真説明〕インタビューに答える福祉施設職員の西村博章さん=5日、東京都中央区

2026年06月07日 07時03分


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