
【ロンドン時事】英与党・労働党を率いてきたスターマー首相が辞任を表明し、後継として18日の下院補選勝利で国政復帰を果たし、党内で求心力を増すバーナム前マンチェスター市長が新首相となる可能性が濃厚となった。支持率低迷に見舞われる労働党は再建に向けて転機を迎えたが、右派政党の台頭や経済不振への対応など「いばらの道」が続いている。
◇「圧勝」の公算
22日朝のスターマー氏の退陣演説から約5時間後、バーナム氏が議会で新議員として就任宣誓を行った。9年ぶりに国政に復帰したバーナム氏を議場の労働党議員らは拍手で迎え、その光景は一議員の就任というより、新たなリーダーの誕生を感じさせた。
スターマー氏の辞任表明を受け、労働党は党首選の手続きに入ったが、バーナム氏は党所属の下院議員の半数に当たる約200人の推薦を取り付けたとされ、「圧勝」の公算が大きい。出馬が予想されたストリーティング前保健相は22日、立候補しないと明言。このため現状では党首選を経ない「権力移譲」が行われるとの見方が強い。7月半ばの立候補締め切りまでに他候補が名乗りを上げる可能性もあるが、党は事実上「バーナム新政権」へと動きだした形だ。
しかし、労働党に向けられる視線はこれまでになく厳しい。2024年7月の総選挙では、多くの国民が14年間続いた保守党政権を見限り、スターマー氏の掲げる「変革」に期待を寄せた結果、労働党が大勝した。しかし、生活費高騰や移民流入などで効果的な対策が取られず、期待はすぐに不満と失望へと変わった。補選でバーナム氏が勝利した中部メイカーフィールド選挙区でも「労働党はもうたくさん。政権から引きずり降ろす」と怒りの声が聞かれた。
◇強硬右派が存在感
一方、5月の地方選で大勝し、既存政党への大きな脅威となっている右派ポピュリスト政党リフォームUKは、今回の補選敗北で手痛い「後退」(英メディア)を強いられた。候補者の女性蔑視的な過去の言動が問題視されイメージが悪化したこともあるが、最大の敗因は右派の新党リストア・ブリテンに支持層を奪われたことにある。
リストアはリフォームのファラージ党首とたもとを分かったロウ議員が昨年設立。難民受け入れ制度の廃止などさらに強硬な反移民政策を掲げ、一部では「極右」「排外主義政党」と称される。米実業家イーロン・マスク氏の支持を受け、結党から間もないにもかかわらず、補選でリストアの候補は得票率約7%で3位につけ、「国政における真の勢力」(タイムズ紙)となりつつある。
右派同士の「つぶし合い」は労働党にとって好材料だが、右派伸長にストップがかかったわけではない。経済が上向かず、国民が生活改善を実感できなければ、右派ポピュリズムがさらに拡大することになる。新たな出発点に立った労働党は29年までに行われる次期総選挙に向け、支持率回復と党勢立て直しを図るが、前途は多難だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕22日、英下院で、新議員として就任宣誓を行うバーナム前マンチェスター市長(左)=議会提供(AFP時事)
2026年06月24日 07時09分