
【ワシントン時事】米連邦最高裁は29日、連邦取引委員会(FTC)の委員解任の是非が問われた訴訟の判決で、時の政権から一定の距離を置いて運営されてきた独立政府機関に対する大統領の統制権拡大を認めた。91年前の司法判断を無効にした形で、今後は大統領の党派的意向が行政運営に反映される余地が広がることになる。
判決は「大統領権限を行使する部下は大統領による解任の対象となる。そうすることで大統領は国民に対し責任を負うことができる」と指摘。大統領のFTC委員の解任権限を制限した1935年の判決を覆した。ただし、連邦準備制度理事会(FRB)の人事については、中央銀行として行政府から独立して機能してきた「歴史的伝統」に鑑み、例外とした。
35年の判決は、大規模な政府による経済介入を柱とする「ニューディール政策」を進めていたフランクリン・ルーズベルト大統領が、同政策に批判的だったFTC委員を更迭したのは不当だと断じた内容だ。皮肉にも最高裁は、かつて否定したルーズベルト氏の行動を容認する立場に転じた。
トランプ大統領はSNSへの投稿で「大統領権限に関し下された最も重要な、歴史的で前例のない判決だ」と歓迎した。トランプ氏は2期目の強権的行動を、大統領には行政部門に対する絶対的統制権があるとする「単一行政理論(UET)」と呼ばれる法理に基づき正当化しており、判決はこのUETの考え方に沿う内容になった。
FTCと同様の独立政府機関は、証券取引委員会(SEC)、運輸安全委員会(NTSB)、原子力規制委員会(NRC)など20以上に達する。独立機関は超党派の委員による合議制を特徴としてきたが、今後は恣意(しい)的な人事介入のハードルが劇的に下がることになりそうだ。
このため、最高裁でもリベラル派のソトマイヨール判事は「建国の父たちが反旗を翻した英国王室ですら持っていなかった権限を大統領に与えるものだ」と反対意見を表明。解任の対象となったFTCのスローター委員も、大統領の言いなりになる人物が規制機関の職を得る可能性が高まり、「腐敗の温床」と化すと批判した。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ米大統領=6月29日、ワシントン(EPA時事)
2026年07月01日 07時06分