
【ワシントン時事】トランプ米政権による人工知能(AI)の規制対応が二転三転している。米新興アンソロピックの「ミュトス」級最新AIモデル「クロード・フェイブル5」を巡り、米政府は一般公開直後にアクセス停止を命じたものの、半月で提供再開を認めた。ソフトウエアの脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力が極めて高いミュトスの出現で、AI推進一辺倒だった政権内には「亀裂」が生じている。
「混乱の中、辛抱強く待ってくれた利用者に感謝する」。アンソロピックが6月末、フェイブル5提供再開に際して出した声明には、政権側との協議での紆余(うよ)曲折がにじんだ。
米商務省はフェイブル5について、一般公開のわずか3日後に国内外の外国人によるアクセス停止を命令。ところが、命令の約半月後には、安全対策が施されたとして輸出管理を解除した。
トランプ政権の対応は、最先端のAIモデルを規制する大統領令でも揺れた。当初は安全性の評価のため、AIモデル公開90日前までに政府による事前審査を義務付ける方向だった。
だが、ホワイトハウスでAI・暗号資産政策の責任者だったデービッド・サックス氏が異論を唱え、トランプ大統領が署名をいったん見送った。最終的には、AIモデルの公開30日前の事前審査に企業が自主的に応じる形に修正し、署名に至った。
今回のフェイブル5提供再開に当たって、ラトニック商務長官は「政府全体で足並みをそろえ、米国の地位を強化した」と強調した。しかし、AI規制を巡っては、政権内の対立が垣間見える。
第2次政権は発足以降、AI規制緩和を推進。米国の技術覇権を重視するサックス氏ら「テックライト(右派)」が存在感を増す。一方、ミュトス出現で中国による軍事利用への懸念が高まり、ヘグセス国防長官らは規制強化を主張。結局、ある程度の規制はやむなしとするベセント財務長官と、トランプ氏の側近であるワイルズ大統領首席補佐官らが主導して大統領令の調整が進んだ。
米メディアによると、「Z.ai」として知られる中国の北京智譜華章科技の最新モデル「GLM―5.2」は、脆弱性を発見する能力でミュトスに匹敵するとの評価もある。中国勢が迫る中、AI開発と規制に揺れる米政権のかじ取りは、今後も波乱が続きそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕米ホワイトハウスの会合に出席するトランプ大統領(中)と、人工知能(AI)・暗号資産政策責任者のデービッド・サックス氏(右)、ベセント財務長官(左)=2025年3月(EPA時事)
2026年07月04日 20時33分