東北大などの研究チームは30日、便秘症治療薬ルビプロストンに、慢性腎臓病(CKD)の進行を抑える働きがあることを臨床試験(治験)で確認したと発表した。ヒトで腎機能を保つ効果が示されたのは初めて。CKD治療の新たな選択肢となる可能性がある。論文は米科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載された。
国内では成人の約8人に1人がCKDと推計される。進行すると人工透析が必要になるが、腎臓の働きそのものを改善する薬はこれまでなかった。
阿部高明・東北大大学院教授らは、CKD患者に多い便秘が腸内環境を乱し、腎機能を低下させていると仮定。2016~19年、腎機能が中~高度に低下した患者118人を対象に、薬を飲むグループと偽薬を飲むグループに分け、24週間経過を追った。
その結果、薬を投与したグループでは腎臓の働きを示す指標の悪化が抑えられていた。特に機能低下が中程度の人は、少ない薬量でも効果が確認された。
さらに詳しい分析で、ルビプロストンが腸内細菌の働きを変え、「スペルミジン」という物質を増やすことが判明。マウスを使った実験で、スペルミジンを与えると腎機能が改善されることが確認された。
スペルミジンが、腎臓の細胞内でエネルギーをつくるミトコンドリアの働きを助け、機能低下を防ぐと考えられるという。
研究チームは「腸内環境を整えることで腎機能を守れる可能性がある。今後は薬の効果が見込まれる患者グループを特定し、治験を進めたい」としている。
2025年08月30日 07時03分
society