
運転開始から40年以上が経過した関西電力の美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1~4号機(同県高浜町)を巡り、安全対策が不十分だとして、地元住民らが運転差し止めを求めた二つの仮処分の即時抗告審で、名古屋高裁金沢支部(大野和明裁判長)は28日、差し止めを認めず、住民側の即時抗告を退ける決定を出した。
大野裁判長は、住民側の主張は「原発に抽象的な危険性があるというにとどまる」と指摘。両原発について「住民らの人格的利益が侵害される具体的な危険が存在するとは認められない」と結論付けた。
福井地裁は昨年3月、原子力規制委員会の審査などに問題はなく適切だとして、いずれも差し止めを認めず、住民側が即時抗告していた。
住民側は、両原発で想定される地震の揺れ(基準地震動)が低水準だなどと訴えていたが、大野裁判長は「過去に国内で観測された地震動より低いことは当然あり得る」と指摘。地域性の違いを考慮することが必要とされており、基準地震動の策定方法は「不合理と言えない」として退けた。
弁護団の笠原一浩弁護士は記者会見で「大変不当な決定だ」とした上で、不服申し立ては「住民とよく話し合って考えたい」と話した。
高浜1、2号機と美浜3号機は1974~76年、高浜3、4号機は85年に運転を開始。いずれも東京電力福島第1原発事故後に定められた新規制基準の審査に合格し、再稼働している。
関電の話
当社の主張を裁判所に理解いただいた結果と考えている。引き続き、安全性・信頼性の向上に努める。
〔写真説明〕関西電力の美浜、高浜両原発の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審の決定を受け、「不当決定を許さない」などと書かれた紙を掲げる住民ら=28日午前、金沢市
〔写真説明〕関西電力の美浜、高浜両原発の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審の決定後、記者会見する住民ら=28日午後、金沢市
2025年11月28日 15時22分