東京都文京区のマッサージ店で、当時12歳のタイ国籍の少女が性的サービスをさせられていた事件は、警視庁も人身取引事案として捜査している。長年、こうした問題に取り組んできた弁護士は「買春行為の根絶が不可欠」として、売春防止法などの改正を訴えている。
政府の報告書によると、日本で発生した性的搾取や労働搾取といった人身取引による外国人被害者数は、2005年の117人をピークに減少傾向で、24年は8人だった。警察庁によると、外国籍の18歳未満の被害者は、同年までの5年間に1人という。
ただ、性的搾取を目的とした人身取引の実態把握は難しいのが現状だ。千葉大大学院の佐々木綾子准教授(国際社会福祉論)によると、あっせん業者らを通じて短期滞在で入国し、風俗店などで働くケースでは、「自分も悪い」と思い込まされている外国人もいるという。こうしたケースは本人が周囲に助けを求めにくいこともあり、「認定された被害者数が実態を反映しているとは言い切れない」と話す。
「人身売買禁止ネットワーク」共同代表の吉田容子弁護士も、「氷山の一角」とみる。特に外国人被害者は、言語の問題や相談できる親族や友人が身近にいないため孤立状態にあると指摘。オーバーステイや借金返済などを理由に脅されることもあるといい、「被害がより表面化しにくくなっているのではないか」と話した。
その上で被害の未然防止が重要だと強調。現在の売春防止法では「買春」行為は罰則の対象外のため、需要根絶に向け法改正の必要性を訴えた。政府も11月、買春行為をした者に対する規制について罰則創設を含めて検討する方針を示している。
2025年12月27日 07時04分
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