「心の寄り添い、社会の安全に」=まな娘失い、歩んだケアの道―遺族の本郷由美子さん・池田小事件25年



児童8人が犠牲となった大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)の殺傷事件は、8日で25年を迎える。小学2年だった本郷優希さん=当時(7)=を亡くした母親の由美子さん(60)は事件後、つらい境遇にある人を支える「グリーフケア」と出合った。「心の寄り添いが社会の安全につながる」。亡きまな娘への思いを胸に、活動を続けている。

由美子さんにとって優希さんを失ったあの日は、「今まで生きてきた基盤が崩壊するような出来事」だったという。事件直後、激しい怒りや深い悲しみに襲われた。「他の人も同じ目に遭ってしまえ」。そう考える自分がおぞましかった。精神的に追い詰められ、自ら命を絶つことも考えた。

事件から2カ月たった頃、1通の手紙が届いた。差出人は、1999年に米国で起きたコロンバイン高校銃乱射事件の遺族。「あなたが何をどう感じても、それは間違いじゃない」「思いを表現することを恐れないでください」―。由美子さんの気持ちに寄り添う言葉が並んでいた。

由美子さんは「寂しい、苦しい、つらい。こう思うのは当然の反応だということを教えてもらった」と振り返る。手紙に励まされ、思いを紙に書き出したり、人に話したりできるようになった。「悲しみに寄り添うことで、救える命を救える」と感じた。

こうした経験から、由美子さんはグリーフケアの道を模索し始める。対話を通して心のケアを行う民間資格を取り、上智大のグリーフケア研究所で3年間学んだ。福祉サービスが必要な人を行政につなぐため、社会福祉士の資格も取得した。

支援対象は多岐にわたり、犯罪やいじめなどの被害者のほか、受刑者や非行少年ら加害者側との対話も重ねる。「生い立ちに傷を持っている人もいる。抱える生きづらさに寄り添えば、自他を傷つけようとする気持ちも緩和されるかもしれない」。心に寄り添うことが、社会の安全・安心につながると信じている。

由美子さんは現在、東京都内の小学校で児童の学校生活を手助けする支援員の仕事に就く。優希さんと同世代の職員と働き、児童の相談に乗ったり、勉強をサポートしたり。優希さんの将来の夢は学校の先生になることだった。「優希が見ていたであろう世界を、私の目で見ているのかもしれない」。25年がたった今、そう感じている。

〔写真説明〕グリーフケアに関する自著を手にする遺族の本郷由美子さん=5月26日、東京都荒川区 〔写真説明〕本郷優希さん(遺族提供)

2026年06月08日 07時03分


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