石破茂首相は20日に横浜市で開幕する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で、アフリカ中部のザンビアから東部のモザンビークの港に至る物流網「ナカラ回廊」整備の加速化を打ち出す。鉱物資源の供給網強化が狙いで、相手国の要請を待たずに提案する「オファー型」協力の枠組みを活用する。
ザンビアは銅やコバルトなどが産出され、主にアフリカ大陸西側に位置するアンゴラの港を経由して輸出が行われている。ただ、日本に向けてはモザンビークのナカラ港が最短ルートのため、日本政府は2012年から、ザンビアからマラウイを経てモザンビークへと通じる「ナカラ回廊」の開発を手掛けてきた。
TICAD9で、首相はナカラ回廊の整備が進んでいないことを受け、ルート上の3カ国に対し支援を表明する方針。従来の政府開発援助(ODA)に加え、国際機関や民間企業の投融資も活用する。給水施設や幹線道路などを含む地域一帯のインフラ開発を支援して広域の産業振興につなげ、ルート全体の価値向上を目指す。
日本政府はインドから中東、アフリカまでを一帯として位置付けて経済的結び付きを強める「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」を打ち出す。ナカラ回廊と合わせて地域全体で貿易・投資を拡大させ、日本企業の進出を後押しする。
アフリカ諸国に対し、中国は巨大な経済力を背景に補助金攻勢で取り込みを図っている。一方、日本政府は、独自の支援で重要鉱物の供給網を強化する狙いがある。政府関係者は「重要鉱物の供給網は日本の経済安全保障に直結する。回廊の開発が地域の発展とともに日本にとっても利益となる」と説明した。
TICAD9は20日から3日間の日程で開催。首相が議長を務め、アフリカ各国の首脳らを招く。
【時事通信社】
〔写真説明〕モザンビーク北部の風景=2018年3月撮影(AFP時事)
2025年08月18日 12時43分