石破茂首相は終戦記念日の15日、東京都内で開かれた全国戦没者追悼式の式辞で、「あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばならない」と述べ、「反省」に言及した。首相式辞に反省が盛り込まれたのは、2012年の野田佳彦首相以来。一方、戦後80年の節目に合わせた「見解」については15日の公表を見送った。
式辞で、石破首相は先の大戦について「戦争の惨禍を決して繰り返さない。進む道を二度と間違えない」と述べた上で反省に触れたが、アジア諸国に対する加害責任には言及しなかった。
首相は首相官邸で記者団に、反省の趣旨について、「あのような戦争を二度と行わないため、その反省と教訓を改めて胸に刻む必要がある」と説明。「これまでの政府の見解と変わるものではない」と語った。
1994年の首相式辞で、村山富市氏が「深い反省」を表明し、この後の首相も言及してきた。一方、安倍晋三氏は第1次政権の07年には「反省」の表現を用いたが、13年以降の式辞では触れていなかった。
戦後80年に当たり、首相は閣議決定を伴う「首相談話」ではなく、戦争の検証を柱とする「見解」の公表に意欲を示している。首相周辺は15日の見送りについて「準備が間に合わなかった」と説明。首相は公表時期について、退陣圧力が強まる自民党内の情勢を見極めつつ、慎重に探る考え。日本が降伏文書に署名した9月2日は外す方向だ。
首相は記者団の取材に、「戦後80年のメッセージの在り方について現時点で決まっているものでない」と説明。内容に関しては「今までの談話の積み重ねも踏まえながら、適切に判断する」と述べた。
戦後80年の見解公表を巡り、保守派を中心に慎重論が出ている。このため、見解は歴史認識に踏み込まない見通し。林芳正官房長官は15日の記者会見で、「歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく」と述べた。
首相は追悼式に先立ち、都内の千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れ、献花。靖国神社への参拝は見送り、玉串料を納めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕全国戦没者追悼式で式辞を述べる石破茂首相=15日午前、東京都千代田区
2025年08月16日 07時06分