
【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザでの停戦をうたう和平案「第1段階」の合意が発効して10日で1カ月となる。イスラエルはイスラム組織ハマスの合意違反を主張してガザで攻撃を繰り返し、発効後のガザでの死者は240人を超えた。イスラエルでは、ガザでの停戦維持や戦後構想を巡り主導権を握る米国に対する反発も目立つ。武装解除に後ろ向きなハマスは勢力再興を画策しており、和平案の形骸化が進む恐れもある。
合意に基づき、ハマスは2023年のイスラエル奇襲でガザに連れ去った人質のうち生存者全員を解放。ただ、人質の遺体返還は遅れている。一方、ガザに侵攻したイスラエル軍はガザ市中心部などから撤退したが、ガザ全体の約半分に相当する地域を依然掌握。ガザ南部では少なくとも2度、ハマス側と交戦し、イスラエル兵に死者が出た。イスラエル軍は「脅威」排除を目的とした空爆や攻撃を続けている。
ハマスの武装解除などを含む和平案「第2段階」への移行を目指すトランプ米政権は10月下旬、バンス副大統領ら高官を次々にイスラエルに送り込み、停戦維持のためのてこ入れを図った。トランプ大統領は11月6日、イスラエル軍撤退後のガザの要所での展開を想定する国際部隊について、発足は「もうすぐだ」と強調した。
ただ、報道によると、イスラエルは国際部隊の展開について、ガザで軍事作戦の必要が生じた際に「行動の自由」が制限されると懸念している。ネタニヤフ首相は、自国の安全保障は「自ら判断する」と主張して米国の動きをけん制。米国が構想するガザでの住居再建についても複数の閣僚が反対しているとされる。
元イスラエル国会議員のパレスチナ問題専門家エイナット・ウィルフ氏は、イスラエルの対米協力はあくまで「条件付きだ」と指摘する。ハマスが武装解除に応じず、ガザで指揮系統再構築の兆候を示せば、イスラエル軍は標的を絞った攻撃で阻止するだろうと説明した。
一方、ハマス幹部のアブマルズーク氏は4日、中東の衛星テレビ局アルジャジーラとのインタビューで、ハマスが武装放棄すれば「他の組織が台頭する」と強調。ガザの秩序を保つためにはハマスの武力が必要だとの考えを示した。別の専門家は、ハマスが武装解除を迫られる第2段階への移行を回避するため、第1段階を引き延ばそうとしていると分析している。
【時事通信社】
〔写真説明〕バンス米副大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=10月22日、エルサレム(EPA時事)
〔写真説明〕7日、パレスチナ自治区ガザ北部ジャバリヤで、がれきに囲まれた道を自転車を押して歩く市民(AFP時事)
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市で、赤十字国際委員会(ICRC)の車両の前に立つハマス戦闘員=2日(AFP時事)
2025年11月10日 16時09分