政府が12年ぶりに見直した首都直下地震の被害想定では、最新の科学的知見を踏まえて地震モデルや地形データなどが一部更新された。その結果、想定される震度分布や津波の浸水範囲などで変わった部分があったものの、全体として大きな変化は見られなかったという。
前回と同様に、マグニチュード(M)7級の内陸直下型と、M8級の海溝型に分けて、複数の発生モデルを検討。M7級は「南関東地域のどの場所でも発生する可能性がある」と指摘した上で、首都の中枢機能や中核都市に影響を与えるような19通りの地震について震度分布を推計した。
「国難級の災害」とされた被害想定は、最も影響が大きいと考えられる都心南部直下地震で出した。東京都の一部で震度7、埼玉や神奈川県など広い範囲で6強、茨城県でも6弱の揺れになる可能性があるという。
M8級の海溝型では、大正関東地震(関東大震災、1923年)や元禄関東地震(1703年)をもたらした相模トラフ沿いや、房総半島南東沖などを震源とする地震を想定。東京23区内では内陸直下型より揺れが小さい傾向だが、神奈川や千葉県で震度7や6強などとされた。
このうち最大クラスの地震では、東京湾内で最大4メートル程度、伊豆半島から三浦半島、房総半島付近で5~15メートル程度の津波が押し寄せ、20メートルを超える地点もあるという。
いずれの地震でも、東京湾内では比較的低くなると予想されているが、荒川・江戸川流域の海抜ゼロメートル地帯では、堤防や水門が壊れるなどして、浸水被害が広がる可能性がある。
政府の地震調査委員会は、相模トラフ沿いではM8級の地震が180~590年間隔で発生すると評価している。今回の報告書では、最短の180年で考えると、すでに半分が経過していることになるとして「中長期的視野に立って考慮することが適切」と指摘された。
【時事通信社】
2025年12月19日 20時30分
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