原因究明は道半ば=179人犠牲の旅客機事故から1年―韓国



【務安(韓国)時事】韓国南西部全羅南道の務安国際空港で旅客機が着陸に失敗し、乗客乗員181人のうち179人が死亡した事故から29日で1年。国土交通省傘下の事故調査委員会が原因究明を進めたが、遺族は独立した調査を求めて反発。真相はいまだ明らかになっていない。

事故は昨年12月29日に発生。バンコク発の格安航空会社(LCC)済州航空の旅客機が胴体着陸し、滑走路の先にあった土手状のコンクリート構造物に衝突した。着陸前には、機体が鳥と衝突する「バードストライク」が起きていた。

操縦士が損傷した右側エンジンではなく、左側エンジンを切った―。調査委員会が7月に行った中間報告に対し、遺族は激怒した。構造物を設置した国交省の傘下にある調査委が「操縦士に責任を押しつけようとしている」と映ったためだ。

事故で妻と娘を亡くした南西部・光州市の金成哲さん(53)は「最初の半年は政府を信じて待っていた」と振り返る。金さんら遺族は、事故にはバードストライクや構造物の不適切な設置など複数の要因が絡んでいると考えているが、強調されたのは操縦士の不手際。金さんは「操作ミスを前面に出し、他のことは隠していると感じた」と憤る。

遺族側の求め通り、調査委員会を首相室傘下に移管する法案は近く国会で可決される見通しになり、国会が真相究明を図る「国政調査」も始動。事故から1年がたってようやく動きだした形で、調査委員会の調査期間は当初見込まれていた最大1年半よりも長引くとみられている。

離着陸が止められたままの務安空港内には遺族らが滞在するテントが残っており、一部の遺族はここで寝泊まりする。金さんもその一人だ。事故後、「勤務中に涙があふれ、仕事が手につかなくなった」といい、半年後に退職。現在は週の大半を空港で過ごしながら、政府に真相究明を求める活動を続けている。

【時事通信社】 〔写真説明〕韓国南西部全羅南道の務安国際空港で着陸に失敗した旅客機の残骸=2024年12月(EPA時事) 〔写真説明〕韓国南西部全羅南道の務安国際空港内に設けられた旅客機事故の犠牲者を追悼する献花台=28日 〔写真説明〕韓国南西部全羅南道の務安国際空港内に設けられた遺族らが滞在するテント=28日

2025年12月28日 19時05分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース