
【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザはイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が10月に発効した後、食料状況の改善により一部での飢饉(ききん)状態を脱したとされる。しかし、苦境は続き、多くの子供が今後も栄養失調に直面する恐れがある。約2年に及ぶ戦闘で受けた心の傷も深い。
国連機関や国際NGOなどが参加する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の検討委員会は今月19日、ガザが飢饉状態を脱したとする報告書を発表した。8月時点ではガザの中心都市ガザ市一帯で飢饉の発生を確認したが、停戦発効で物資搬入が一定程度改善したという。
ただ、イスラエルの搬入制限は続き、状況は依然厳しい。報告書では、生後半年から5歳未満の子供10万人以上が来年10月中旬までに急性栄養失調に陥る可能性があるという厳しい見通しも示された。国連児童基金(ユニセフ)などは市場に食品が出回るようになったものの、脆弱(ぜいじゃく)な子育て家庭には入手困難だと指摘している。
一方、パレスチナの人権団体は、戦火による子供の「心の傷」が深刻で、全体の9割超が心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいると報告する。中には極度のストレスから発語がなくなった子供もいる。
ガザ南部ハンユニスにあるリハビリ拠点の責任者、マイス・アジュールさん(39)は時事通信の取材に、声を失った子供たちは悲惨な体験をしていると強調。目の前で親が焼死したり、崩れた建物の下に長時間閉じ込められたりするなど「恐怖の記憶」は消すことができず、「治療は困難で、回復まで長い時間と労力が必要だ」と話した。
【時事通信社】
〔写真説明〕病院で診察を受ける栄養失調の子供=16日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニス(ロイター時事)
2025年12月28日 07時11分