
【カイロ時事】北アフリカのチュニジアで、反政府デモにより23年間独裁を敷いたベンアリ政権が崩壊して14日で15年。独裁打倒という「成功例」は中東各国の民衆を勇気づけ、民主化要求運動「アラブの春」が広がるきっかけを作った。しかし、2019年に就任したサイード大統領の強権化が進行。根付かぬ民主主義や低迷する経済に国民は疲弊している。
地元ジャーナリストはサイード氏が「民主主義を悪用」し、権力を独占していると指摘する。議会や司法機関は大統領への「忠誠」を示すことに躍起になっているとして、「事実上、独裁体制に戻った」と語る。
チュニジアはベンアリ政権下で北アフリカ有数の経済成長を遂げたものの、深刻な汚職体質や言論弾圧、高い失業率が国民を苦しめた。10年12月、警察の不当な扱いに抗議した若者が焼身自殺したことを機に民衆の怒りが爆発。全土に広がった反政府デモは「ジャスミン革命」と呼ばれ、11年1月に独裁政権を倒した。
14年に大統領の権力分散を定めた新憲法が成立。短命政権が続いた後、19年の大統領選で勝利したのが憲法学者のサイード氏だった。
同氏は21年、経済危機や新型コロナ禍への対応で国民の怒りが政府に向かうと、首相を解任し議会を停止した。22年には憲法を改正し、議会解散や判事任命などの権限を大統領に集中させ、大統領任期も延長できるようにした。
敵対するイスラム主義政党に加え、メディアや人権団体、法律家やSNS利用者の動向に目を光らせ、恣意(しい)的な逮捕も横行する。24年の大統領選前には有力対抗馬が収監され、サイード氏が90%以上の得票率で再選された。
経済は依然低迷し、失業率は約16%で革命前よりも悪化した。汚職への批判もある。状況は革命前夜に重なり、抗議活動も行われているが、体制への影響は限定的とみられている。
米シンクタンク「ワシントン近東政策研究所」の報告書によれば、国民は抗議活動よりも国外移住を志向している。先のジャーナリストは「政治や経済、社会不安に国民は疲れ、もはや次の革命など望んでいない」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕チュニジアの反政府デモ=10日、チュニス(EPA時事)
〔写真説明〕チュニジアのサイード大統領=2024年10月、チュニス(AFP時事)
2026年01月14日 07時06分