
円相場が歴史的な安値圏に突入した。円安は輸出企業の収益改善につながる一方、資源や農作物などの輸入コストを押し上げ、国内の物価高を助長。内需型企業や中小企業にとっては逆風になるほか、1ドル=162円の為替水準では、家計の負担が年1万6000円程度膨らむとの試算もある。
円相場は1日に162円80銭台と、1986年12月以来39年半ぶりの安値を更新し、その後も円安圧力は強い。86年当時は、前年に日米や欧州の先進5カ国(G5)がドル高是正を決めたプラザ合意を受け、今とは逆に円高が進行していた。輸出主導型経済で自動車や電気機器といった主要産業の国際競争力は高く、86年の日本の貿易黒字は13兆円を超え、貿易摩擦が激化した。
その後は、生産拠点の海外移転などで日本の産業構造が激変。バブル経済の崩壊後はデフレが長期化し、日銀の黒田東彦前総裁が進めた「異次元の金融緩和」で円の下落は加速した。植田和男総裁の下、日銀は金融政策の正常化を進めているが、日米の金利差は依然大きく、円安圧力は収まっていない。
帝国データバンクが5月に行った調査では、2290社の想定為替レート(2026年度)は平均147円87銭で、現状は約14円の円安。想定より資材や商品の輸入コストが膨らめば、価格転嫁力の弱い中小企業の経営への打撃は大きい。東京商工リサーチによると、円安が原因の倒産は26年上半期に45件と、前年同期の1.3倍だった。「卸売業や小売業などを中心に円安倒産はしばらく高水準で推移する」とみている。
円安は食品や日用品の値上がりも招く。みずほ総合研究所の試算では、為替が1ドル=162円で1年間推移した場合、家計の負担は25年と比べて平均1万5534円増える。収入が年300万円未満の場合は9878円、1000万円以上は2万3684円と、収入に占める負担割合は低所得層ほど大きい。
企業の価格転嫁の広がりを踏まえ、「過去に比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」(内田真一日銀副総裁)と指摘される。輸入インフレが加速すれば、個人消費などへの悪影響も避けられない見通しだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕港に停泊するコンテナ船=5月19日、東京都内(EPA時事)
2026年07月06日 21時17分