EUの鉄鋼関税上げが波紋=日本にも矛先、「ルール尊重」どこへ



欧州連合(EU)が打ち出した鉄鋼関税の引き上げが波紋を広げている。中国の過剰生産から域内産業を保護するのが目的というが、経済連携協定(EPA)で無関税となった国々も含め無差別に高関税を課したためだ。貿易ルールの尊重を掲げる一方で国際的な通商合意をないがしろにするEUの姿勢に、各国は猛反発している。

EUは2018年から一定輸入枠を超えた鉄鋼製品に25%の関税を課すセーフガード(緊急輸入制限)を実施してきたが、今年7月1日から税率を50%に上げ、無関税枠も半減させた。これに伴い、日本の無関税枠は計約80万トン(22~24年実績は平均約150万トン)となった。

背景には、中国の安い鉄鋼製品が市場にあふれ、域内産業が苦境に追い込まれている現状がある。ただ新措置は中国に的を絞らず、EPA相手国にも矛先を向けた。日本とのEPAでは鉄鋼関税は撤廃対象となっており、経済産業省は6月公表の不公正貿易報告書でEPA違反と批判。高市早苗首相もEUのフォンデアライエン欧州委員長との会談で懸念を伝えた。

新措置の発表は昨年10月。各国の交渉期間は3カ月にとどまり、交渉筋は「EUには当初から調整する意欲がなかった」と話す。一国が報復関税で対抗すればその税率はEU以外にも適用されるため、「報復合戦にならないと判断し、足元を見て措置を講じた」とみる。日本鉄鋼連盟などは今月1日、政府に交渉継続を要請し、世界貿易機関(WTO)への提訴の検討も求めた。

米国がトランプ政権の下で自由貿易に背を向ける中、EUは保護主義に重心を移しつつも、貿易ルールを尊重する陣営の代表として振る舞ってきた。国際通商筋は「EUの措置のマグニチュードは米国の高関税よりも大きい」と指摘し、鉄鋼産業だけにとどまらず、世界の通商秩序そのものを揺るがすほどの衝撃があると強調した。

【時事通信社】 〔写真説明〕欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(左)との会談に臨む高市早苗首相=6月17日、フランス・エビアン

2026年07月05日 07時02分


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