
自分が操縦する飛行機で、被災した子をサッカーのワールドカップ(W杯)へ―。熱戦が続くW杯北中米3カ国大会で、日本航空子会社ジップエア・トーキョーの鈴木星志機長(46)は6月中旬、能登半島地震で被災した石川県の中学生7人を米国に送り届けた。「子どもたちが前を向くきっかけになってほしい」と鈴木さんは力を込める。
生徒の訪米は、被災地の子を励まし世界とのつながりを持ってもらおうと、有志が企画。6月13日から約1週間の日程で、同県能登町などから参加した。7人は米テキサス州ダラス近郊であった初戦の対オランダ戦を観戦し、付近で開かれた報告会で被災地の現状や支援への感謝を訴えた。
鈴木さんは被災地支援を通じ、訪米の企画者らと交流があった。「渡航便を引き受けたい」と考え、昨年6月に会社へ協力を要請。同県出身の同僚パイロット2人にも同乗を呼び掛け実現させた。
鈴木さんは大学生だった2002年、W杯日韓大会の会場で各国のサポーターと交流し、「人と人をつなぐ懸け橋」となる仕事に就きたいと考えた。パイロットを目指し、大学卒業後は日本航空に入って訓練を重ねた。しかし10年1月に同社が経営破綻。あと約1カ月で操縦士の資格を取得できる状況だった。
会社から待機指示が出され将来が見通せない中、同年6月に南アフリカ大会の試合を観戦するため乗った機内で、あるアナウンスが流れた。「Welcome
to
World
Cup」。機長からの粋なメッセージに乗客は大きな拍手を送ったといい、「必ずパイロットになりたい」と気持ちを新たにした。
その後、別の航空会社に入り操縦士の資格を取得。23年からは、国際線のパイロットとしてジップエア・トーキョーで働き始めた。
「一緒に『最高の景色』を見られることを願っています」。鈴木さんは6月13日、成田空港から米国に向かう機内のアナウンスで、能登の支援活動を紹介した上で、石川県の中学生ら乗客に呼び掛けた。今後も同様の活動に携わる意向といい、「少しでも能登の現状を知ってもらい、支援の輪が広がってほしい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕サッカーのワールドカップ北中米3カ国大会の会場前で、能登半島地震で被災した石川県の中学生と交流する鈴木星志機長(後列左)ら=6月14日、米ダラス近郊(鈴木さん提供)
2026年07月05日 07時00分