
【カイロ時事】イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意から1年近くたったパレスチナ自治区ガザでは、これまでに確認された7万3000人超の死者とは別に、今なお1万人以上の行方が分からなくなっている。残された家族は気持ちの区切りをつけられず、長い苦しみの中にいる。
◇胸騒ぎが後悔に
中心都市ガザ市でテント生活を送るモンゼル・ガラブリさん(48)が取材に答えた。長男のマフムードさん=当時(18)=は2024年6月26日の朝、避難先の中部デイルバラで国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の拠点にガラブリさんが服用する薬を受け取りに行ったきり、消息不明だ。
薬の受け取りはマフムードさんの日課だった。戦闘が激化する中での外出に「胸騒ぎ」を覚えたガラブリさんはその日、「遅くなるなよ」と声を掛け、マフムードさんは片手を上げて出ていった。その後ろ姿が脳裏に浮かび続ける。「あの時止めていれば」と、繰り返し強い自責の念に襲われる。
がれきなどから収容された遺体は通常、ガザの保健当局の施設で写真撮影された後、番号が振られる。ガラブリさんは施設に通い詰め、何枚もの写真を確認した。当局が身元を特定できなかった遺体は、体の一部しかなかったり白骨化したりして写真でも到底判別できない。
周囲からは、マフムードさんを捜し続けるのは「人生を無駄にしている」とも言われる。しかし、ガラブリさんは子供の消息が分からない状況では「人生に意味はない。将来など想像もできない」と語る。
◇「イスラエルが連れ去り」情報も
ガザでは昨年10月の停戦合意後も断続的な攻撃が繰り返され、同月以降も1300人以上の死者が出ている。イスラエルの搬入制限による重機不足や不発弾がある危険性もあり、多くの遺体が残されているであろう場所の捜索がなかなか進まない。また、現在もイスラエルの支配下にあるガザ全体の約6割の地域では、そもそも捜索自体ができない状況という。DNA鑑定の道具の不足も指摘される。
一方、ガザの人権団体は8月、イスラエル軍がこれまでに2000~3500人程度をガザから連れ去ったとする推計を発表した。イスラエル紙はハマスとの将来的な交渉材料に使うため、同国が戦闘員や非戦闘員ら約1700人の遺体を保管していると報じている。
【時事通信社】
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市で、行方不明の長男マフムードさんの写真を見せるモンゼル・ガラブリさん=7月29日(本人提供・時事)
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザで行方不明となったマフムードさん=2022年撮影(父のモンゼル・ガラブリさん提供・時事)
2026年09月10日 12時29分