学生抗議、強権体制脅かす=政治腐敗、死亡事故に怒り―政権交代に現実味・セルビア



旧ユーゴスラビア構成国セルビアで、ロシアや中国に接近し強権体制を敷いてきたブチッチ政権が、政治腐敗に怒る学生らの抗議運動によって追い詰められている。運動は市民の幅広い支持を集め、25日のセルビア議会選挙での政権交代が現実味を帯びている。

◇社会一変

セルビア第2の都市、北部ノビサド中心部の駅。フェンスで閉ざされた駅の前には16個の赤いハート形が並び、それぞれに名前が書かれていた。2年前の2024年11月1日、駅舎のコンクリート製のひさしが突然崩落し、下敷きになった通行人ら16人が死亡した。名前はその犠牲者だ。この事故以来、セルビア社会は一変した。

駅は当時、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の下、欧州屈指の親中国だったハンガリーとセルビアをつなぐ高速鉄道計画の一環で改修中だった。ずさんな工事や管理体制の不備が事故の原因とされたが、背景として不透明な資金の流れや意思決定プロセスが浮かび上がり、事故は腐敗の象徴と見なされた。

一部の学生が始めた原因究明と責任追及を求める抗議運動は、政権に不満を募らせてきた市民を味方に付け、ブチッチ政権打倒を目指す大きなうねりとなった。通学に駅を利用していたというノビサド大大学院生のアレクサ・アラルギッチさん(27)は「自分があそこにいてもおかしくなかった」と事故を振り返る。「社会をむしばむがんを取り除く」と迷わず運動に身を投じた。

◇「国家の敵」

14年に首相に就任したブチッチ氏は情報相や国防相を務めた経歴から、メディアや法執行機関に強い影響力を持ち、反対勢力を抑え込んできた。17年に本来は象徴的な役割だった大統領に転じて実権を維持。今回の議会選で首相返り咲きを狙うが、「最大の危機」(外交筋)に直面しているとみられている。

「裁判所、警察、軍隊、教会といった主要機関は全て与党の支配下にある。大学だけが『自由』を保っている」と話すのはベオグラード大のブラダン・ジョキッチ学長(63)。「学生は正しい」と運動への支持を公言し、与党側から「国家の敵」だと標的にされている。学長室も警察の捜索を受けたが、学生に伴走する構えだ。

◇朝は試験、夜は警察と対峙

学生たちは新たな政治勢力「学生リスト」を立ち上げ、政治色のない大学教員やスポーツ選手らを議員候補として擁立した。ベオグラード大経営学部のミリツァ・ヨバノビッチ准教授(37)はそうした候補の一人だ。教え子から請われ、教育への弾圧を「傍観できない」と腹をくくった。多くの候補が政治未経験だが「経験者たちがこの国で一体何をしてきたというのか」と意に介さない。

セルビアでは年内に大統領選も控え、闘争は続く。憲法学を専攻するレリヤ・ヤルコバツキさん(22)は「朝は大学で試験を受け、夜は街頭で警察と対峙(たいじ)する日々だ。大変だけど、自分たちや将来の世代のためにも闘わなければ」と忙しそうに仲間が待つ学生街のカフェへ向かった。(ベオグラード時事)。

【時事通信社】 〔写真説明〕ノビサド駅前に並ぶ事故犠牲者の名前が書かれたハート形の模型=12日、セルビア北部ノビサド 〔写真説明〕「学生は勝利する」と書かれた横断幕を持って歩く学生たち=9月14日、セルビア・ベオグラード(EPA時事) 〔写真説明〕学生運動に参加しているレリヤ・ヤルコバツキさん=13日、ベオグラード

2026年10月21日 12時47分


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