
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)内で、加盟国が武力攻撃を受けた際の「相互防衛」を巡る議論が活発化している。トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)からの脱退を示唆する中、NATOの集団防衛体制への疑念が広がっているためだ。長年依存してきた米国主導の安全保障の枠組みを見直し、防衛面で自立性を高める必要があるとの危機感が背景にある。
「実質的にNATO条約第5条より強い」。フランスのマクロン大統領はEU基本条約第42条7項が定める「相互防衛」の意義を強調する。第42条7項は、武力攻撃を受けた加盟国に対し、他の加盟国が「あらゆる手段」をもって支援する義務を明記しており、文言上は強い拘束力を持つ。一方、NATO条約第5条は、一部加盟国に対する攻撃を全加盟国への攻撃と見なす集団防衛の原則を掲げるものの、具体的な対応は各国の判断に委ねられている。
EUは4月下旬にキプロスで開いた非公式首脳会議で、相互防衛に関する議論に着手した。欧州メディアによると、加盟27カ国の大使級会合でも非公開の協議や机上演習が行われており、サイバー攻撃など非軍事的手段を含む多様な脅威を想定した議論が進められているという。
ただ、EU内の立場は一枚岩ではない。カラス外交安全保障上級代表(EU外相)は、EUの防衛枠組みはNATOと「相互に補完的」との認識を示し、代替ではないと強調する。ロシアの脅威に直面する東欧やバルト諸国では、米国の関与を前提としたNATOの枠組みが不可欠だとする見方が根強い。
EUはNATOのような統合された軍事機構や明確な指揮命令系統を持っていないことも課題だ。第42条7項はテロ対応などを念頭に置いた条項とされ、実際に発動されたのも2015年のパリ同時多発テロの1回にとどまっている。EU内で合意を形成し、実効性のある枠組みを構築できるかはなお不透明だ。
〔写真説明〕EU(欧州連合)非公式首脳会議=4月24日、ニコシア(EPA時事)
2026年05月06日 12時28分