「高市内閣発足」が1位=時事通信社が選ぶ25年十大ニュース【国内】



時事通信社は2025年に国内と海外で起きた主要なニュースを10件ずつ選定した。順位と内容はそれぞれ次の通り。(肩書は当時)

【国内】

(1)高市内閣発足、自維連立スタート

夏の参院選で惨敗し、衆参で少数与党に転落した石破茂首相の退陣表明後、激動の展開が続いた。自民党は直ちに総裁選に突入。小泉進次郎氏との決選投票の結果、高市早苗氏が第29代総裁に選出された。だが、わずか6日後、「政治とカネ」の問題を巡る自民の消極姿勢に失望した公明党が連立離脱を表明。政局は一気に流動化した。

自民は新たな連立相手として、日本維新の会と政策合意。高市氏は10月21日召集の臨時国会で女性初の第104代首相に指名され、自維連立政権がスタートした。各種世論調査によると、発足時の高市内閣支持率は軒並み高水準を記録。11月末には無所属議員を自民会派に取り込み、衆院で過半数を回復した。ただ、参院では依然として少数与党の状態で、厳しい政権運営が続く。

(2)「ミスタープロ野球」長嶋茂雄さん死去

プロ野球の巨人で選手、監督として多くの功績を残し、「ミスタープロ野球」と呼ばれた長嶋茂雄さんが6月、肺炎のため89歳で死去した。通夜、告別式は密葬で執り行われ、親族のほか長嶋さんとのコンビで「ON砲」と呼ばれたソフトバンク球団会長の王貞治さん、監督時代のまな弟子である松井秀喜さんらが参列。11月のお別れの会は巨人本拠地の東京ドームで営まれ、球界関係者だけでなく政界、経済界からも多く出席し、ファンを含め約3万2400人が来場した。

プロ野球では来季から野手に贈られる「長嶋茂雄賞」を新設。走攻守の総合成績に加え、国民的スターとしてプロ野球の発展に寄与した長嶋さんのように、ファンを魅了するプレーや球界の価値向上への貢献度が評価される。

(3)日経平均株価、史上初の5万円台に

日経平均株価は10月27日に史上初めて5万円を超えた。年初に4万円前後で推移していた日経平均は、トランプ米大統領による高関税政策への懸念から4月上旬に大きく下落したが、夏にかけて関税交渉の進展とともに回復。その後は人工知能(AI)の成長期待を背景に、データセンターや半導体に関連した銘柄が大幅に値上がりし、相場をけん引した。

10月に就任した高市早苗首相が、金融緩和と積極財政を志向していることに期待した「高市トレード」も追い風となった。上場企業の自社株買いが相場を下支えし、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測も投資家心理を上向かせた。ただ、AI企業が巨額投資に見合う収益を確保できるかは見通しにくく、株価は過熱状態だとの指摘も出ている。

(4)参院選、自公過半数割れ

7月20日投開票の第27回参院選で自民、公明両党が歴史的敗北を喫し、与党が過半数を割った。これにより自公は衆参両院で少数となり、政治を前に進めるのが困難な状況に陥った。石破茂首相の責任論が自民内で強まったが石破氏は続投。決断を先送りし、新内閣発足まで約3カ月にわたる「政治空白」を招いた。

参院選では、自公は勝敗ラインとした50議席を下回る47議席にとどまり、非改選(75)と合わせて全体の過半数(125)を確保できなかった。立憲民主党も上積みできず、有権者の既成政党離れが鮮明になった。国民民主党や参政党が批判の受け皿となり、参院では野党の多党化が進んだ。石破氏は自民内の「石破降ろし」に衆院解散で対抗することも模索したが、支持を得られず退陣を余儀なくされた。

(5)各地でクマ被害相次ぐ

クマの人里への出没が相次ぎ、人身被害者数が過去最多となった。環境省によると、2025年4月~11月末時点のクマによる人身被害者数は230人で、そのうち13人が死亡。これまで最多だった23年度(被害者数219人、死亡者数6人)をいずれも上回った。餌のブナが凶作となっている東北地方の被害者数が全体の6割超を占めた。

9月には改正鳥獣保護管理法が施行され、クマが市街地に出没した際に市町村の判断で発砲を認める「緊急銃猟」制度が始まった。また、政府は11月、警察によるライフル銃を使用した駆除や、狩猟免許を持つ自治体職員「ガバメントハンター」の人件費支援制度の創設など、緊急的、短期的、中期的の3段階に分けて取り組みを盛り込んだクマ被害対策パッケージをまとめた。

(6)止まらぬ物価高、政府備蓄米放出

物価高は一向に収まらず、特にコメの高騰が家計を直撃した。「令和の米騒動」前に5キロ2000円台だった平均店頭価格は、4000円台に急上昇。政府は3月、凶作や災害時に限っていた備蓄米の放出を、「流通の円滑化」を目的に初めて実施した。2000円を切る「古古古米」も店頭に並んで価格は抑制されたが、新米が出回り始めると再び上昇に転じた。

品薄や価格高騰について、農林水産省は流通の目詰まりが原因で、コメは十分にあると説明していた。その後、農水省が需給を見誤り、2024年産は需要に対して生産量が少なかったことが判明。石破政権は増産方針を掲げたものの、高市政権で軌道修正され、消費者の手が届く価格と農家が生産を続けられる価格の間でどうバランスを取るか問われている。

(7)戦後80年、「不戦の誓い」各地で

8月15日は終戦から80年の節目に当たり、日本各地で不戦と平和を誓う催しが開かれた。東京都千代田区の日本武道館では政府主催の全国戦没者追悼式が行われ、先の大戦で犠牲となった約310万人を悼んだ。天皇陛下は「戦中・戦後の苦難を語り継ぎ、平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願う」と述べられた。

終戦から80年となり戦争体験者らの数は激減しており、記憶や教訓の風化防止や次世代への継承が大きな課題になっている。また、海外などで亡くなった約240万人のうち約112万柱の遺骨は未回収だが、海中に沈むなど収集が困難とされる遺骨も多数ある。空襲被害者らに対する国の補償を求める声も根強く、解決すべき問題は依然多い。

(8)大阪・関西万博が開催

4月13日~10月13日の184日間、大阪市の人工島「夢洲」で大阪・関西万博が開かれた。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに158カ国・地域や国内の企業、自治体がパビリオンを出展。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用した「iPS心臓」をはじめ最新技術を披露した。参加国の要人が多数来日し、石破茂首相と会談するなど「万博外交」も展開された。

準備段階では会場建設の遅れや開催費用の膨張が問題視され、機運の高まりを欠いたが、世界最大の木造建築物「大屋根リング」や、日本で初公開となる芸術作品を相次いで展示したイタリア館などが人気を集め、2500万人超が来場した。公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズ販売も好調で、運営収支は黒字を見込む。

(9)高市首相の「台湾有事」発言で日中関係悪化

高市早苗首相は11月7日の国会答弁で「台湾有事」について、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると語った。中国が台湾を「核心的利益の中の核心」と位置付けていることから歴代首相は明言を避けていた。反発する中国は発言撤回を求めたが、首相は「政府の従来見解に沿ったもの」として応じていない。日中対立の長期化は不可避で、人的交流や経済活動のほか、安全保障分野にも影響が出ている。

首相は党首討論で発言の真意を問われると「聞かれた」からと、国会で質問した立憲民主党の岡田克也元外相に責任があるかのような説明をした。SNS上では首相を支持する保守派などから賛意が示される一方、首相批判の声も強まるなど、国内世論を分断する事態を招いている。

(10)ノーベル生理学・医学、化学賞で日本人受賞

2025年のノーベル賞は生理学・医学賞を坂口志文・大阪大特任教授が、化学賞を北川進・京都大特別教授がそれぞれ受賞した。日本人の受賞は昨年、平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に続き2年連続。

坂口さんの受賞業績は、免疫の働きを抑制する「制御性T細胞」の発見。免疫が過剰に働き、自分の体を攻撃し始める「自己免疫疾患」の治療などへの応用が期待される。北川さんは、極小の穴が無数に空いた「金属有機構造体(MOF)」を開発。二酸化炭素や水素などさまざまな気体を穴に取り込んで分離、貯蔵可能で、環境・エネルギー分野に貢献する新材料として有望視される。2人は12月10日にストックホルムで開かれた授賞式に出席。栄誉のメダルを受け取った。

〔写真説明〕第104代首相に指名された自民党の高市早苗総裁(中央)=10月21日、衆院本会議場 〔写真説明〕長嶋茂雄さんのお別れの会で、献花する参列者ら=11月21日、東京ドーム 〔写真説明〕日経平均株価が史上初めて5万円を超え、証券会社で割られたくす玉=10月27日、東京都中央区 〔写真説明〕参院選惨敗で取材を受ける石破茂首相(自民党総裁)=7月20日、東京・永田町の自民党本部 〔写真説明〕民家近くに出没したクマ=10月30日、秋田市 〔写真説明〕大手スーパーの店頭に陳列された政府備蓄米=6月1日、東京都品川区 〔写真説明〕全国戦没者追悼式で黙とうされる天皇、皇后両陛下=8月15日正午、東京都千代田区 〔写真説明〕閉幕を控え、多くの来場者で混雑する大阪・関西万博の会場。巨大な「ミャクミャク像」の周辺で記念撮影する人たち=10月12日、大阪市此花区 〔写真説明〕衆院予算委員会で立憲民主党の岡田克也元外相の質問に答弁する高市早苗首相=11月7日、国会内 〔写真説明〕ノーベル賞授賞式で、生理学・医学賞のメダルと賞状を授与された坂口志文大阪大特任教授(写真左)と、化学賞のメダルと賞状を授与された北川進京都大特別教授(同右)=12月10日、ストックホルム

2025年12月15日 20時30分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース