「トランプ関税で混乱」が1位=時事通信社が選ぶ25年十大ニュース【海外】



時事通信社は2025年に国内と海外で起きた主要なニュースを10件ずつ選定した。順位と内容はそれぞれ次の通り。(肩書は当時) 【海外】

(1)トランプ関税で世界経済混乱

「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領が4月、貿易赤字削減や米製造業の活発化などをもくろみ、ほぼ全ての貿易相手国に高率の「相互関税」を課すと公表。景気減速懸念に加え、二転三転する政策に金融市場が乱高下し、世界経済が混乱に陥った。日本への関税率は日米交渉の結果、当初の24%から15%に引き下げられたものの、輸出産業を中心に先行き不透明感は残る。

米国が覇権を争う中国とは、互いに100%超の関税を掛け合う貿易戦争に発展した。引き下げで合意したものの、10月に中国がレアアース(希土類)の輸出規制強化を打ち出すと、米側が報復として100%の追加関税を課す意向を表明。首脳会談で歩み寄り休戦状態となっているが、米中対立は今後も世界経済のリスクとしてくすぶる。

(2)第2次トランプ政権がスタート

米共和党のドナルド・トランプ氏が1月20日、第47代大統領に就任し、第2次政権を始動させた。4年ぶりの復権で、就任演説では「黄金時代が始まる。米国の衰退は終わる」と強調した。初日に42本の大統領令などに署名し、民主党のバイデン前政権が推し進めた多様性や国際協調を重視する主要政策を全面的に転換。「米国第一」を再び追求する姿勢を鮮明にした。

トランプ氏は大統領令で、連邦政府の「多様性、公平性、包摂性」(DEI)政策を廃止した。世界保健機関(WHO)や気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱も命じた。移民問題やエネルギー生産を巡っては「国家非常事態」を宣言。就任式は寒さのため40年ぶりに屋内開催され、実業家イーロン・マスク氏らが出席した。

(3)ガザ和平「第1段階」で合意

パレスチナ自治区ガザで2023年10月から続いた戦闘で、イスラエルとイスラム組織ハマスは今年10月9日、トランプ米政権が示した和平計画の「第1段階」に合意した。双方は翌10日に停戦入り。ガザに連れ去られた人質のうち生存者20人全員が解放され、イスラエル軍は計画で取り決められた線まで撤退した。

一方、合意が定める人質遺体の返還は難航し、イスラエルも人道支援物資搬入を渋るなど、履行は順調に進まなかった。停戦後も局地的な戦闘でガザ住民300人以上が死亡。23年の戦闘開始以降のガザでの死者は7万人を超えた。計画の「第2段階」でハマスの武装解除やガザの治安維持を担う国際部隊の編成も進んでいない。イスラエル軍駐留が長期化し、ガザが実質的に分割されるとの見方も出ている。

(4)韓国の尹大統領が罷免

韓国憲法裁判所は4月4日、2024年12月の「非常戒厳」宣言を巡って弾劾訴追されていた尹錫悦大統領に裁判官全員一致で罷免を宣告した。「戦時・事変」でもなく、憲法上非常戒厳が認められる要件を満たしていないと指摘し、「重大な違法行為だ」と断じた。22年5月に大統領に就任した尹氏は、任期を約2年残して即時失職。韓国大統領として2例目の罷免となった。

罷免に伴う大統領選は6月3日に行われ、保守勢力に逆風が吹く中、革新系「共に民主党」の李在明氏が当選。一方、尹氏は内乱首謀罪などで起訴され、来年2月ごろにも一審判決が出る見通しだ。李政権は発足直後に特別検察官を任命し、非常戒厳だけでなく、金建希夫人の疑惑など尹政権を対象にした広範囲の捜査を進めている。

(5)大谷翔平MVP、ドジャース連覇

米大リーグ、ドジャースの大谷翔平がナ・リーグ最優秀選手(MVP)に選出された。ア・リーグのエンゼルス在籍時を含めて3年連続4度目で、いずれも満票。4度の受賞は7度のバリー・ボンズ(ジャイアンツなど)に次ぎ、単独で歴代2位となった。打率2割8分2厘、リーグ2位の55本塁打、102打点の成績で、主に1番打者を務めて146得点は両リーグトップ。2季ぶりに投手に復帰し、投打の二刀流でファンを魅了した一年でもあった。

大谷、山本由伸、佐々木朗希を擁するドジャースはブルージェイズを4勝3敗で下し、ワールドシリーズ連覇。山本は第2戦で完投勝利を挙げ、先発で勝った第6戦に続く第7戦では九回途中から延長十一回まで投げ切り、シリーズ3勝でMVPに選ばれた。

(6)米・イスラエル両軍がイラン核施設攻撃

米・イスラエル両軍が6月22日、イラン中部ナタンズ、フォルドゥ、イスファハンの核施設を攻撃した。イスラエルは同13日、パレスチナのイスラム組織ハマスなどを支援するイランを先制攻撃し、要人や核化学者らを殺害。応戦したイランとの武力衝突が続く中、米国はイスラエルの作戦に合流する形で核施設攻撃に踏み切った。

米軍は地下深い施設を破壊するため、最新型地下貫通型爆弾「GBU57」を使用。イランは報復に在カタール米軍基地を攻撃した。直後に事態収拾に向けた動きが加速し、イスラエルとイランの間で6月25日までに停戦が成立した。トランプ米大統領は攻撃が「大きな成功を収めた」と主張したが、イランのウラン濃縮能力に大きな打撃を与えられなかったとの見方もある。

(7)米ロ首脳会談もウクライナ停戦至らず

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が8月15日、米アラスカ州アンカレジで首脳会談を行った。2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻を巡り約3時間協議したが、停戦合意には至らなかった。猛攻を続けるロシアに不満を強めるトランプ氏だったが、プーチン氏は戦闘終結には侵攻の「根本原因」の除去が必要との従来の主張を繰り返し、議論は平行線をたどった。

10月にはハンガリーでの再会談が発表されたが、トランプ氏は「目的地にたどり着ける気がしない」と中止を表明。ロシア石油最大手ロスネフチなどへの追加制裁を発表し、圧力強化に踏み切った。米主導の新たな和平案を巡り間接交渉が続くが、ウクライナは領土割譲を拒絶しており、和平の早期実現の見通しは立っていない。

(8)英仏加豪がパレスチナを国家承認

英国、フランス、カナダとオーストラリアは9月下旬、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続く中、パレスチナの国家承認を相次ぎ表明した。英仏加は先進7カ国(G7)。イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平実現を目指すと同時に、ガザの人道状況悪化を受け、イスラエルへの圧力を強めた。

マクロン仏大統領が7月末、承認方針を公表し、2国家共存を目指す首脳級会合に合わせて9月22日に正式に承認。前日の21日の英加豪を含め、承認国は約160カ国まで広がった。ただ、イスラエルは猛反発しており、象徴的な意味合いにとどまる。米国は反対しパレスチナ自治政府のアッバス議長の国連総会出席に必要なビザ発給を拒否。日本も慎重姿勢を示している。

(9)中ロ朝首脳が北京軍事パレードを観覧

北京の天安門広場で9月3日、「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」を記念する軍事パレードが行われ、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が一堂に会した。3人が各国首脳を先導して歩いたり、観覧席で親しげに会話したりする姿が報じられ、3国の結束を世界に誇示する格好となった。

3国の最高指導者が天安門で顔を合わせるのは1959年以来。パレードでは新型兵器が披露され、習氏は演説で「人類は平和か戦争か、対話か対決かの選択に直面している。中国人民は歴史の正しい側に立つ」と主張した。先進7カ国(G7)をはじめとする西側諸国は政府代表の派遣を見合わせ、戦後80年の節目で分断が進む国際情勢を象徴する行事となった。

(10)米大統領がFRB介入、利下げ再開

トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)に対し、なりふり構わず政策金利の引き下げを迫った。パウエル議長の判断が「遅過ぎる」と再三批判し、議長交代をちらつかせて、株高につながる利下げを要求。住宅ローン不正疑惑を理由に現理事へ解任通告をしたり、自身に近い政権高官を新理事に送り込んだりと、露骨な介入で中央銀行の独立性が揺らぐ懸念が強まった。

こうした中、FRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で昨年12月以来6会合ぶりに利下げを再開した。雇用の下振れリスクが高まったと判断したためだが、米経済が堅調さを保つ中、利下げで景気を刺激するとインフレ加速を招きかねない。高関税政策の影響も引き続き不安材料で、金融政策の先行きは不透明感が増している。

〔写真説明〕パネルを掲げ、相互関税について発表するトランプ米大統領=4月2日、ワシントン(AFP時事) 〔写真説明〕米大統領就任式に臨むトランプ氏(左)=1月20日、ワシントン(AFP時事) 〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザから帰還し、家族に迎えられるイスラエルの人質男性(中央)=日時、場所不明(イスラエル軍提供)(AFP時事) 〔写真説明〕法廷で着席する韓国の尹錫悦前大統領=9月26日、ソウル(EPA時事) 〔写真説明〕ブルージェイズとのワールドシリーズを制し、優勝トロフィーを手にシャンパンファイトで笑顔を見せる(右から)ドジャースの佐々木朗希、山本由伸、大谷翔平=11月2日、トロント(AFP時事) 〔写真説明〕6月15日(写真上)と同22日のイラン中部ナタンズの核施設(マクサー・テクノロジーズ提供)(AFP時事) 〔写真説明〕米アラスカ州アンカレジのエルメンドルフ・リチャードソン米軍基地で握手を交わすトランプ米大統領(右)とロシアのプーチン大統領=8月15日(AFP時事) 〔写真説明〕パレスチナ自治政府のアッバス議長が演説する国連本部議場=9月22日(AFP時事) 〔写真説明〕北京での軍事パレードを前に言葉を交わす(左から)ロシアのプーチン大領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=9月3日、北京(AFP時事) 〔写真説明〕トランプ米大統領(左)と連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=米ワシントン(AFP時事)

2025年12月15日 20時30分


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