
佐藤栄作首相(当時)の密使として沖縄返還を巡る米国との交渉に当たり、日米間の核再持ち込みに関する「密約」に関わったとされる国際政治学者若泉敬の遺書が、沖縄県公文書館で今月から一般公開されている。政府内で非核三原則の見直しなどを巡る議論が進められる中、担当者は「嘆願状に込められた思いを直接見て感じ取ってほしい」と話している。28日まで。
若泉は1972年の沖縄返還を前に、秘密交渉を担当した。ベトナム戦争中で、在沖米軍基地の重要性は高く、交渉は難航。有事の際に核兵器の再持ち込みを認める密約が交わされたとされる。
若泉は94年、著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」で密約の存在を明らかにした。同年6月23日の沖縄「慰霊の日」に合わせて「嘆願状」と題した遺書をしたため、96年7月に自ら命を絶った。
嘆願状は「沖縄県の皆様」で始まり、「歴史に対して負っている私の重い『結果責任』を執り(中略)自裁します」「唯々申し訳無く存じ(中略)御詫びするに言葉がありません」などと記されている。親交のあった福井県の男性が所有しており、今年11月に沖縄県公文書館に寄贈された。
一般公開を担当する県文化芸術振興会の仲本和彦さんは、遺書について「沖縄の現状を理解し、今後を考える一つの重要な資料になる」と指摘。非核三原則についても「当時の国際情勢やこれまでの歩みを振り返りながら理解する必要がある」とし、「多くの人が考えるきっかけになるのではないか」と期待した。
〔写真説明〕沖縄県公文書館に寄贈された国際政治学者若泉敬の遺書=11月21日、同県南風原町
2025年12月22日 14時31分