―今年は東日本大震災から15年、熊本地震から10年の節目を迎えます。復興への思いや、災害が続く時代に象徴としてどのような役割を果たしていきたいか、お聞かせください。
今年は、東日本大震災から15年、熊本地震から10年の節目の年になります。震災が各地に甚大な被害を及ぼしたことは、今思い出しても胸が痛みます。
被災地では、これまで多くの人々のたゆみない努力により、復興の歩みが重ねられてきました。これまでの皆さんの努力に深い敬意を表するとともに、海外からの支援と協力も含めて、復興の歩みを支えてこられた多くの方々に改めて感謝の意を表します。
被災地では、インフラの面などで復興が進んできた一方で、生業(なりわい)やコミュニティの再建など、まだ課題もあるように感じています。また、親しい方が亡くなられたり、生活環境が一変してしまったりした方々のことを思うと、震災の傷はいまだ癒えていないと感じます。災害による影響は人それぞれに異なり、10年、15年という年月の経過だけでは測れない重みを伴うものだと思います。これからも、雅子と共に、被災地に心を寄せていきたいと思っています。
被災地では、若い世代によって震災の経験と教訓をつないでいく取組が進められていると聞いています。昨年訪れた、阪神・淡路大震災から30年を迎えた兵庫県でも、この取組が進められていることを心強く思います。「天災は忘れた頃にやってくる」という近代の警句があります。大規模な災害の経験と教訓についても、世代を超えて語り継ぎ、復旧・復興の経験などを心に留め、将来起こり得る南海トラフ地震や首都直下地震などに対して、今一度私たちの備えを確認する必要があると強く感じます。
愛子も、昨年、能登半島地震の被災地を訪れ、また、防災に関する行事にも出席する中で、災害が被災地の人々にもたらす影響の大きさや、復興が多くの人々の努力と長い時間を要することを直(じか)に感じるとともに、災害や復興の記憶を長く引き継いでいくことの大切さも心に刻んでいるように思います。愛子にも、これからも被災地の人々に心を寄せていってもらいたいと思っています。
これまでの日本の歴史の中でも、大きな自然災害が続く困難な時期が幾度もありました。それらの折に、歴代の天皇は様々なことをなさっています。疫病や天変地異等が続いた奈良時代の聖武天皇は、不安定な世を鎮めたいと強く願われ、大仏を建立されました。次の平安時代にあっては、嵯峨天皇が、疫病の収束を願われて、般若心経(はんにゃしんぎょう)を書写されたといいます。鎌倉時代以降もその行いは受け継がれ、後光厳天皇、後花園天皇、後奈良天皇、正親町天皇、そして、江戸時代の光格天皇も同じような思いから般若心経の書写をされました。私は、これら6方の天皇が書写された般若心経を京都の大覚寺で拝見し、国の平安と国民の安寧を強く願われた歴代天皇の思いに強く心を動かされました。光格天皇は、また、未曾有(みぞう)の災害となった天明の飢饉(きん)の際に、飢饉に苦しむ民のために、米の放出を幕府に申し入れられたといいます。
歴代の天皇は、その時代時代にあって、国民の苦しみに寄り添うべく、思いを受け継がれ、その時々に自らができることを成すよう努められたと思います。上皇上皇后両陛下には、雲仙・普賢岳の噴火災害に始まり、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震を始めとした大きな災害の折には、現地に足を運ばれ、被災者を見舞われました。私も、このような歴代の天皇が歩んでこられた道に思いを致しながら、近年の自然災害が激甚化・頻発化する時代にあって、災害が起こらないことを常に願い、国民と苦楽を共にしながら、被災地の方々の声に耳を傾けつつ、国民に寄り添っていきたいと思っています。
―皇后さまはこの1年も様々な公務に取り組まれました。最近のご様子やご体調をお聞かせください。愛子さまは、ラオスへ初めての海外公式訪問に臨み、活動の幅を広げられました。愛子さまのご様子やご家族で過ごすひととき、陛下のプライベートな時間の過ごし方についてもエピソードを交えてお聞かせください。
雅子は、この1年、戦後80年に当たっての都内や地方への数度にわたる訪問や、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)への2度の訪問、6年ぶりの国賓としてお迎えしたブラジル大統領御夫妻や、大阪・関西万博、第9回アフリカ開発会議などのために来日された多くの賓客との交流に加え、モンゴルを国賓として訪問するなど、多くの公務を務めることができました。多くの方々からの温かい支えを、私も雅子も、有り難く思っております。雅子は、一つ一つの公務に向けて体調を整えるよう努め、心を込めて準備して公務に臨んでいますが、いまだ快復の途上で、体調には波があり、大きな行事の後や行事が続いた場合に、疲れがしばらく残ることもあります。そのような際には、十分に休息を取ってほしいと思いますし、これからも、無理をせずにできることを一つ一つ着実に積み重ねていってほしいと思います。私自身、日々の生活の中でも、公務の場においても、雅子に支えてもらっていることも多くあり、深く感謝しています。
また、私たちそろって、国民の皆さんが直面している様々な状況や困難に心を寄せながら、皆さんとの触れ合いの機会を大切にしたいと思っています。私自身も、雅子と一緒にいろいろな方とお会いすることで皆さんとのお話がより深まり、様々な気付きを得られるように感じています。そしてまた、日頃から世界の国々の情勢や地球規模の様々な課題についても、関心を持つように心掛けています。私と雅子は、今後とも国民の幸せを願い、二人で協力しながら務めを果たしていくことができればと思っています。
愛子は、日本赤十字社での勤務を始めてから間もなく2年が経(た)ち、社会人として3年目を迎えようとしています。職場では、引き続き周囲の方々に温かく御指導いただきながら、少しずつ仕事にも慣れてきたようで、皆さんと協力しながら精一杯仕事に取り組んでいる様子に、社会人として一歩一歩成長していることが感じられ、うれしく思っています。愛子から聞く話は、いわゆる社会で仕事をした経験のない私にとっては、一つ一つが新鮮で、言わば「未知の旅」のように感じられ、とても興味を覚えます。日々の仕事を行う中で、ボランティア活動や防災の分野などにも関心を深めていることもあり、昨年は能登半島地震の被災地を訪れたり、防災推進国民大会への出席のために新潟県を訪れたりしました。これからも、多くの経験を重ねながら視野を広げ、更に成長していってほしいと願っています。
また、昨年11月には、初めての公式外国訪問としてラオスを訪れ、トンルン国家主席を始め政府の方々やラオスの国民の皆さんに大変温かく迎えていただきました。愛子も、ラオスの歴史や文化に関心を持って準備をし、心を込めて務めを果たしてくれたことをうれしく思っています。帰国後には、ラオスでの様々な経験や出会った方々のことなどを私たちに話してくれました。
今後、皇族としての仕事の幅も徐々に広がってくるのではないかと思います。愛子には、引き続き感謝と思いやりの気持ちを持ちながら、これからも多くの経験を重ねて更に成長し、皇室の一員としての務めを大切に果たしていってくれることを願っています。
2026年02月23日 00時14分
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