「目いっぱいの仕掛け」積む=SLIM、こうのとりの経験反映―MMX製造の三菱電機



世界で初めて火星の衛星から砂の持ち帰りを目指す探査機「MMX」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や科学者から求められる水準は高く、開発に携わったメーカーは、従来の人工衛星や探査機の製造とは異なる工夫や試行錯誤を重ねた。5年にわたる長い旅路の第一歩を記したMMXに、担当者は「目いっぱいの仕掛けを積んだ。しっかりやり切る子が出来上がった」とエールを送った。

三菱電機でシステム設計を担当した山口智宏さんは「一番大きかったのは『ダイエット』。質量を少しでも軽くし、その分燃料を多く積むための試行錯誤を行った」と振り返る。軽量化のため二つあった通信用アンテナを統合。信頼性の担保を巡りJAXA側とは何度も議論し、具体的な運用手順まで考慮した上で取捨選択していったという。

フォボスへの着陸も難題だった。同社は日本初の月面軟着陸を成し遂げた「SLIM」の開発も担当したが、観測データが十分ある月と異なり、フォボスは重力も地形も不確定要素だらけ。そこで、着陸に使う4本脚はある程度の幅を持たせて強度を設計。つぶれて衝撃を吸収する緩衝材を開発するなどの工夫を凝らした。

一方、狙った地点に降りる精度面では、SLIMの技術を継承、発展させた。探査機があらかじめ用意した月面のデータと照合する方法で100メートル精度の着陸を実現したが、「降りている途中で撮った画像を利用する機能を新たに追加」(航法誘導担当の上野竜雄さん)した。機体のコンピューターが、降下しながら次々と撮影される地形画像から、クレーターなどの特徴点を見つけ出して位置を照合することで、SLIMを上回る誤差10メートルの精度を実現できる見込みだという。

また、火星を周回するフォボスに安全に接近、着陸する技術は、地球を回る国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングする補給機「こうのとり」とも共通する。「絶対にぶつけてはいけない、有人を想定した安全性の考え方は、MMXのベースになった」と言う山口さん。「JAXAとの調整でも、メーカーにしか分からない、ここは譲れないという点は強く申し上げた」と胸を張った。

〔写真説明〕火星衛星探査機「MMX」の機体製造を担当した三菱電機の山口智宏さん(左)と上野竜雄さん=9日、神奈川県鎌倉市の同社鎌倉製作所

2026年10月21日 12時47分


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