前川さん無罪確定=検察上告見送り「厳粛に受け止め」―福井中3殺害、逮捕から38年



福井市で1986年に中学3年の女子生徒が殺害された事件で、殺人罪で懲役7年が確定し服役した前川彰司さん(60)を無罪とした名古屋高裁金沢支部の再審判決について、名古屋高検は1日、上告を見送ったと発表した。同日、上訴権を放棄する手続きをした。逮捕から38年を経て、前川さんの無罪が確定した。

記者会見した浜克彦・高検次席検事は、再審の末に無罪が確定した前川さんについて「現時点で謝罪は考えていないが、相当期間服役していたことを厳粛に受け止めている」と述べた。

談話も公表し、「憲法違反や判例違反といった上告理由は見当たらなかった」と説明。判決で証拠の誤りを放置したと批判されたことは「このような訴訟活動が行われるべきではなく、不公正と評価されたのも当然だ。指摘を重く受け止め、真摯(しんし)に反省し、教訓とすべきだと考えている」とした。

福井県警の増田美希子本部長も記者会見し、「重く受け止めている」と繰り返したが、謝罪の言葉はなかった。

7月18日の高裁支部判決は、有罪の柱となった「事件当夜、服に血の付いた前川さんを見た」とする知人ら6人の証言について、捜査に行き詰まった警察による「誘導の疑い」を指摘し信用性を否定。目撃時期の根拠としたテレビの歌番組の放送日について、誤りを検察官が一審段階で把握しながら明らかにしなかった点を「不誠実で罪深い行為」と指弾した。

警察も供述を得るため勾留中の知人に面会や飲食などの不当な利益供与を行うなどしたと認定し、「刑事司法全体への信頼を揺るがしかねず深刻だ」と非難した。

前川さんは87年に逮捕され、一貫して関与を否定した。一審福井地裁で無罪が言い渡されたが、二審高裁支部で有罪とされ、最高裁で確定。服役後の2011年に再審開始決定が出たものの、名古屋高裁で覆された。2回目の再審請求で、高裁支部が昨年10月、再審開始を決定した。

【時事通信社】 〔写真説明〕福井女子中学生殺害事件の再審判決で無罪が言い渡され、花束を受け取る前川彰司さん(左)=7月18日、金沢市 〔写真説明〕前川彰司さんの無罪が確定したことを受け、記者会見する福井県警の増田美希子本部長=1日午後、福井市

2025年08月01日 22時04分


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