トランプ米大統領は日本への相互関税について、事前通告した25%から引き下げ、15%とする大統領令に署名した。日米関税交渉の合意に基づき、自動車関税も15%(現在27.5%)に引き下げられる見通し。想定より負担が軽減されることに、中小企業からは安堵(あんど)の声も漏れる。ただ、自動車関税引き下げの実施時期は不明な上、米側は再引き上げも示唆。霧が晴れたとは言えない状況だ。
「正直、ほっとしている」。東京都大田区でダイヤモンド工具を製造するインターナショナルダイヤモンドの江口国康社長は胸をなで下ろした。同社の主要取引先は自動車部品の切削・研磨機械のメーカー。トランプ氏が大統領選に勝利した後、昨年12月ごろから自動車業界では高関税政策への警戒感から国内投資を手控える動きが続き、同社も受注は1~2割減少した。
日米合意で先行き不透明感が和らいだことで「メーカーも投資計画を決められる」と期待するが、米側は「トランプ氏が(日米合意の履行に)不満であれば、25%の関税を再び適用する」(ベセント財務長官)と威嚇するなど楽観はできない。
江口氏は「景気や関税は、われわれにはどうしようもできない」と吐露。政府に、物価高や人件費上昇に苦しむ中小企業への支援策を求める一方、円安の恩恵を受ける自動車メーカーも取引先の価格転嫁要請を受け入れてほしいと訴える。
米関税政策がアジア企業との取引に間接的な影響を及ぼしていると明かすのは、衣料品などの繊維加工機械を製造するAIKIリオテック(愛知県稲沢市)。トランプ氏がアジア諸国に高関税を突き付けたことで、同地域の取引先が設備投資計画を延期したり、「出荷の先送りを求められたりしたこともある」(友松義博副社長)と話した。
近年の日本食ブームに乗り、昨年度の日本酒の対米輸出額が過去最高と好調だった酒造会社も、相互関税のあおりを受ける。当初想定よりも低いが、4月に課された一律分の10%からは5ポイントの引き上げとなり、ほぼ無税だった3月以前と比べれば高水準であることに変わりはない。
海外販売の半分を米国向けが占めるという八海醸造(新潟県南魚沼市)の担当者は「今後の米国市場の動向や消費者の反応を注視している」との姿勢を示した。米国以外の販路の一層の拡大も検討する。
【時事通信社】
〔写真説明〕米国の関税政策の影響に関し取材に応じるインターナショナルダイヤモンドの江口国康社長=7月28日、東京都大田区
2025年08月02日 07時17分