【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、約6年ぶりの中国の習近平国家主席との会談で、「隙間風」が吹いていた対中関係の修復を内外にアピールした。米国との対話を見据え、中国の「後ろ盾」を得ていると示すとともに、中国の支援を受け、国内経済の安定化につなげる思惑もありそうだ。
北朝鮮はこのところ、ロシアとの関係を重視。ウクライナ侵攻を続けるロシアに兵士を派遣するなど軍事協力を深めてきたが、その半面、対中関係は冷え込んでいた。ウクライナ和平を巡る交渉開始に伴い、北朝鮮にはロシアに対する影響力が低下するのではないかとの懸念がある。
トランプ米大統領が、正恩氏との再接触に意欲的なことも大きい。正恩氏は2018~19年、トランプ氏と3回会談したが、その前後に習氏と会談した経緯がある。
北朝鮮は「核保有国」としての地位を求めており、「米朝首脳会談がすぐに実現するのは難しい」(韓国の専門家)との見方が強い。それでも、対話の可能性を見据え、中国と立場を調整しておきたいのが本音だ。
4日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、正恩氏が3日、中国の抗日戦争勝利80年の記念行事に出席した様子を大々的に伝えた。正恩氏が、習氏やロシアのプーチン大統領といった大国の指導者と肩を並べる存在であると、国内向けにアピールした格好だ。
北朝鮮は10月10日、朝鮮労働党創建80周年の節目を迎え、来年1月までには第9回党大会の開催が予想される。中国からの観光客の呼び込みや中朝の経済交流が回復すれば、内部の不安を和らげることにもつながるとの判断があったとみられる。
【時事通信社】
〔写真説明〕北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=3日、北京(AFP時事)
2025年09月05日 07時04分