「人生とは何?」「好きと気になるの違いは?」。北海道斜里町の町立図書館に寄せられた質問と職員の回答を書籍化した「図書館のゆるゆる人生質問箱」(税込み1430円)が異例のヒットになっている。品切れが相次ぎ、3月の出版から3カ月余りで2度目の重版になっている。
図書館には2023年7月から、中高生らが対象の質問箱が置かれている。疑問や悩みを書いて投函(とうかん)すると、職員が回答を掲示板に張り出す仕組みだ。質問は匿名で投函でき、約2年で約700件寄せられた。
「人生とは何ですか?」との問いには「リアクションでは」と回答。続けて「日々降ってくる出来事にどんなリアクションをするかで、次に降ってくる出来事が変わってきます。その連続です。その中では、より気の利いたパフォーマンスが喜ばれます。ある意味では、みんなリアクション芸人みたいなものです。あなたも、私も」と返す。
「好き」と「気になる」の違いに関しては「気になる人がいるというのは、人間関係の宝箱を見つけたということ。ぜひ行動に移し、開けて中身を確認しましょう」と呼び掛ける。その上で「いろんな財宝が入っていると思います。どの『好き』に到達するかは、あなた次第です。なお、中身は空の場合もあります」と記した。
松井卓哉館長は質問箱について、中高生に多様な考えに触れてほしいとの思いで設置したと話す。「SNSが主流の現代は選択肢が多いように見えるが、自分と似通った考えに注目してしまいがち。考えが凝り固まらないよう、いろいろな選択肢を提案したい」と意気込む。
ユーモアあふれる回答が話題となり、出版社のワニブックス(東京都)は今年3月、一冊の本にした。編集担当者は「SNSが盛んな今、掲示板での血の通ったやりとりが読者に響いた」と好評の背景を推測。主要な読者層は20~40代といい、「悩みを抱える現代人に優しく人生のヒントをくれる本になったのでは」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕掲示板の前で書籍を手にする斜里町立図書館の松井卓哉館長=7月11日、北海道斜里町
2025年10月14日 14時31分