今年のノーベル化学賞に決まった京都大の北川進特別教授(74)が開発した金属有機構造体(MOF)は、無数に開いた極小の穴に狙った気体を取り込んで分離・貯蔵できる新しい材料として、地球温暖化問題の解決など幅広い分野での活用が期待される。国内の企業では実用化が加速しており、工場や商業施設での臭い除去や精密機器の保護などに使われている。
金属イオンと有機物の組み合わせからできるMOFは、ナノサイズ(ナノは10億分の1)の骨組みの中に無数の穴が開いている。表面積が非常に大きいことが特徴で、わずか1グラムでサッカー場1面に相当する表面積を持つものもある。大きさや性質を自由に設計することが可能で、特定の気体を穴の中に閉じ込めることができる。
スウェーデン王立科学アカデミーは授賞理由で、砂漠の空気中から水分を採取したり、二酸化炭素を回収したりするなど「人類の重大課題の解決に貢献する可能性がある」と評価した。
化学メーカーの大原パラヂウム化学(京都市)は2023年から、MOFを使った消臭剤や吸着剤を企業向けに販売している。納入先の要望に応じて、シート状のほか、3~4ミリ大の粒状などさまざまな形状の製品があり、ホテル調理場のニンニク臭対策や、工場内で制御盤などの精密機器を酸性ガスから保護する目的などで利用されている。
同社によると、導入を検討中の企業も含めた取引先は100社以上に上るという。大原正吉専務は「臭気対策は、施設の利用者や周辺住民への配慮だけでなく、従業員の労働環境改善にもつながる」と指摘。「社会のイノベーション促進や課題解決を支える一助になれれば」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕大原パラヂウム化学(京都市)が開発、販売する金属有機構造体(MOF)を使った製品。消臭剤や吸着剤などとして活用される(同社提供)
〔写真説明〕大原パラヂウム化学(京都市)が開発、販売する金属有機構造体(MOF)を使った製品。消臭剤や吸着剤などとして活用される(同社提供)
2025年10月13日 14時30分