弱まる多国間外交=連携失速、アジア歴訪で露呈―米大統領



【慶州時事】トランプ米大統領は30日、第2次政権下で初のアジア歴訪を終え、帰国した。中国との競争が激化するインド太平洋地域への外遊だったが、日米韓や日米にオーストラリアとインドを加えた枠組み「クアッド」といった「ミニラテラル」(少数の多国間枠組み)による協調外交をアピールすることはなく、バイデン前政権からの路線転換を鮮明にした。

「われわれの安全保障同盟は初めて経済安保の領域へと拡大する」。トランプ氏は29日、韓国・慶州での演説でこう述べ、関税合意が同盟強化につながっていると強調した。「経済安保は国家安保だ」とも訴え、通商分野で自国を優先する姿勢を再び鮮明にした。

2期目初となったアジア歴訪で、トランプ氏はまずマレーシアを訪れた。東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳を前に「自由で開かれ、繁栄するインド太平洋のために取り組む」と述べ、中国が影響力拡大を目指すASEAN地域への関与を継続する意向を打ち出した。しかし、滞在中に具体的な連携強化に向けた活動は限定的で、同盟国であるフィリピンやオーストラリアの首脳との会合を開かなかった。

外遊最後の訪問地で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれた韓国でも同様だった。高市早苗首相が就任したばかりでもあり、日米韓3カ国の協力強化を打ち出す絶好の機会だったが、日韓首脳とは個別に会談したのみ。関税交渉を通じて取り付けた対米投資の具体化を優先し、自らの実績アピールに終始した。

バイデン前政権は米国との2国間の同盟関係を軸に同盟国同士が連携や協力を拡大し、「格子状」の同盟網を構築することで中国に対抗する戦略を推し進めた。だが、トランプ氏にこうした戦略を受け継ぐ気配はほとんど見られない。

トランプ氏が不在のAPEC首脳会議では、中国の習近平国家主席が「多国間主義」を唱え、自由貿易体制を擁護する姿勢を見せた。トランプ氏が「米国第一」を掲げる中、米国を中心とするミニラテラルの動きが推進力を失いつつあることを強く印象付けるアジア歴訪だった。

【時事通信社】 〔写真説明〕アジア歴訪を終え、米国に戻るトランプ大統領=30日、大統領専用機内(ロイター時事)

2025年11月01日 07時11分


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