
外務省がX(旧ツイッター)などSNS上で「視覚に訴える発信」に力を入れている。「日本の立場を直感的に理解してもらおう」(関係者)と、文章によるメッセージと合わせ、動画、図表、イラストなどを積極的に投稿している。高市早苗首相の台湾有事発言を巡る中国政府の「宣伝戦」にも、視覚的な発信で対抗している。
「ボツワナ。アフリカ大陸の南、南アのちょうど上ぐらいに位置する」。外務省は11月26日、茂木敏充外相とハオラテ・ボツワナ副大統領との夕食会に先立って、茂木氏が地球儀を指さしながらボツワナについて解説する動画をXに投稿した。
関係者によると、外務省が視覚的な発信に注力し始めたのは数年前。各国の幅広い世代に訴えを浸透させるにはどんな手段が効果的か。試行錯誤の末にたどり着いたのが、情報とグラフィックを組み合わせた「インフォグラフィック」だった。
8月のアフリカ開発会議(TICAD)の際はアフリカに拠点を置く日本企業の増加傾向を示したグラフをXに投稿し、息の長い支援をアピール。最近はオーストラリアとの友好協力基本条約署名から50周年を迎えたことを紹介する動画をインスタグラムに載せ、友好ムードを演出した。
PRだけではない。首相の台湾有事発言を受けて「日本で中国人を狙った犯罪が多発している」と中国政府が「宣伝」すると、外務省は中国人が被害者となった凶悪犯罪の認知件数の表をアップし、「指摘は当たらない」と訴えた。この投稿の閲覧数は日本語だけで700万を超えている。
もっとも、日本は事態沈静化が必要との立場。中国との対立をあおるのは本意ではない。ただ、中国外務省は「軍国主義の復活を断じて許さない」とXに投稿するなど、日本への「ネガティブキャンペーン」を緩めておらず、日本外務省幹部は「正確な情報発信は続ける」と強調している。
【時事通信社】
〔写真説明〕外務省=東京・霞が関
〔写真説明〕中国の主張に反論する外務省の「インフォグラフィック」を用いた投稿(外務省の公式Xより)
〔写真説明〕ボツワナについて紹介する茂木敏充外相(外務省の公式Xより)
2025年12月06日 17時00分