大穴、いまだぽっかり=残る臭気、硫化水素の影響も―県道陥没事故1年・埼玉



埼玉県八潮市で下水道管が破損して道路が陥没、トラックが転落した事故は28日で発生から1年となった。現場の県道交差点には今も最大幅約30メートルの大穴が開いたままで、復旧工事は完了までさらに5~7年以上を要す見込みだ。周辺には今も下水の臭気や、発生した硫化水素が漂い、住民を苦しめている。

現場から約70メートルの自営業木下史江さん(56)宅には事故後、臭気が入り込むようになった。「年末年始も臭く、訪ねて来たお客さんが驚いていた」と木下さん。約20年前、庭のある家を求めて東京から移り住んだ一戸建てだが、引っ越しも考えてしまう。「でも、誰がこの土地を買ってくれるのか。現実的にどうにもならない」と肩を落とす。

木下さんは陥没後、家族で市役所庁舎に避難。約2週間後に自宅に戻ると、工事の振動や騒音が続き、「屋外では喉が痛み、目がしょぼしょぼする感じがあった」という。あれから1年。喉や目の違和感は落ち着いたものの、臭気は残り、洗濯物は室内に干しても汚水の臭いが染み付く。

昨年6月ごろからは、金属のアクセサリーや車のエンブレムが黒く腐食するようになった。下水道管内の汚物を微生物が分解する際に生じる硫化水素が関係しているとみられ、木下さんは「ただのさびではなく、黒く表面が削られ、金属が溶けていく感じ」と話す。

臭気や腐食被害に関する住民の声を受け、県は昨年11月、医師による講演会を開催した。登壇した埼玉医科大病院の上條吉人臨床中毒センター長は、硫化水素濃度は温泉地と同等レベルで、「体内で解毒され、健康被害はない」と説明。一方、腐食は低濃度でも生じ、臭気による不快感やストレスで「精神的な問題はある」と語った。

県は現在、破損した下水道管の内部に新たな管の設置工事を進めている。県幹部は「現場を迂回(うかい)させている下水をまっすぐ流せば、臭気が消える可能性もある」と期待するが、臭気が完全に消えるかは、「工事を進めてみないと分からない」という。

【時事通信社】 〔写真説明〕八潮市道路陥没の工事現場=26日、埼玉県八潮市 〔写真説明〕硫化水素の影響で黒く変色したとみられる車のエンブレム部分(木下史江さん提供) 〔写真説明〕硫化水素の影響で黒く変色したとみられるアクセサリー(写真左)と、変色前のアクセサリー(木下史江さん提供)

2026年01月28日 14時57分


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