
国民生活に深く関わる医療、介護、年金といった社会保障制度。少子化によって、支え手である現役世代の負担が増す一方、高齢化の進展でサービス需要は増大するという課題を抱える。衆院選公約で各党は「給付付き税額控除」の創設など、現役世代を含めた負担軽減策を並べるが、肝心の費用の在り方は影を潜める。高市政権は超党派の「国民会議」で、給付と負担の見直し議論を1月から始める構えだったが、選挙戦で後回しになった。
◇実感乏しい負担軽減策
高市早苗首相は、物価高で赤字経営を強いられる医療機関などの支援と同時に、現役世代の社会保険料負担の軽減に取り組んできた。医療機関には、2026年度診療報酬改定で30年ぶりの高水準となる「本体部分」の引き上げで対応。保険料軽減策として、市販薬に似た「OTC類似薬」の患者負担増や、高額な医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の負担上限引き上げを行う。
ただ、現役世代が負担減を実感できるほどの成果を挙げるには至っていない。政府は高齢者の医療・介護の自己負担引き上げも検討しているが、自民党公約は具体的な言及を控えた。連立を組む日本維新の会は医療費の年4兆円削減を掲げ、高齢者にも現役世代と同じ医療費3割負担を求めるが、政権内で足並みがそろうか不透明だ。
◇「給付付き控除」に同調も
一方で自民は、首相主導で給付付き税額控除の導入を打ち出した。減税と給付を組み合わせ、中・低所得者の手取りが増えるようにする狙いだ。具体的な制度設計は超党派の国民会議で議論する。
給付付き税額控除は、中道改革連合も同調し、社会保険料引き下げとセットで公約に掲げた。国民民主党は、中・低所得者向けの保険料還付制度を唱える。参政党は過剰な医療の見直しに加え、診療・介護報酬の引き上げを通じた従事者の賃金アップを目指す。
少子化対策は、国民民主が医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金制度」を廃止すると公約に明記した。参政は0~15歳の子ども1人当たり月10万円支給を目玉に据えた。
共産党は、公的年金額を実質的に目減りさせる仕組みの撤廃を主張。れいわ新選組は高齢者の貧困化を防ぐため、最低保障年金創設を訴える。
社会保障の費用負担の在り方に関しては、各党の公約でも触れられている。ただ、財源を確実に調達できるかといった実現可能性を含め、議論は深まっていない。
【時事通信社】
〔写真説明〕高齢者らが多く集まる巣鴨の地蔵通り商店街を歩く人々=2024年9月、東京都豊島区
2026年02月02日 07時03分