
【パリ時事】日本の春の叙勲(4月29日付発表)で旭日中綬章に選ばれた世界的指揮者パーヴォ・ヤルヴィさん(63)が書面でのインタビューに応じ、受章について「大変光栄で、心から感謝している」と表明した。ヤルヴィさんは旧ソ連構成国だったエストニア出身。ロシアのウクライナ侵攻は「文化的生活の破壊」でもあると非難し、「音楽家も信念に従って立場を明確にし、行動すべきだ」と訴えた。
ヤルヴィさんは今月、スイスのチューリヒ・トーンハレ管弦楽団を率いて訪日。17~23日に横浜、東京、名古屋、大阪で公演し、チャイコフスキーやブルックナーの交響曲を指揮する。ピアニストの反田恭平さんとの共演も予定している。
NHK交響楽団の首席指揮者を務めたヤルヴィさんは「日本は長年、私の音楽人生で非常に特別な地位を占めてきた」と思いを吐露。日本の聴衆は「集中して聴く姿勢と真の音楽理解で世界的に知られている」と絶賛し、指揮者に「聴衆との唯一無二の一体感」をもたらすとたたえた。
侵攻により、ロシアのプーチン大統領と親交がある指揮者ワレリー・ゲルギエフ氏は欧米の音楽界から追われた。ヤルヴィさんは「(侵略国の)体制支持者に活動の場を与えてはならない。文化は権力の正当化に利用されると中立でなくなる」と主張。一方で「私はロシア音楽を演奏し、愛している」とも強調した。
その上で「戦争は至る所で優先事項をねじ曲げ、民主主義国でさえ、資金を文化や教育、医療、音楽から軍事に回す」と指摘。音楽家は共同体の一員である以上、「社会問題に関与せず、音楽だけしていれば良いという考えは偏狭すぎる」とし、「声を上げ、意見を述べる」よう呼び掛けた。
◇パーヴォ・ヤルヴィさん略歴
62年、バルト3国の一つ、エストニアの首都タリン生まれ。80年に渡米し、世界的指揮者レナード・バーンスタインに学んだ。04年、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンの芸術監督に就任。ベートーベンの交響曲の斬新な解釈で高く評価された。15~22年にNHK交響楽団首席指揮者。今年の春の叙勲で「日本・エストニア間の音楽交流と日本の音楽文化の向上・発展に寄与した」として旭日中綬章に選ばれた。故郷で楽団、音楽祭を創設し、文化振興に注力している。
【時事通信社】
〔写真説明〕世界的指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさん(カウポ・キカス氏撮影)
〔写真説明〕ロンドンでNHK交響楽団と公演したパーヴォ・ヤルヴィさん(ベリンダ・ローリー氏撮影)
2026年05月02日 20時40分