慶応大発のベンチャー企業「ハートシード」(東京都港区)は12日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した心筋細胞の塊(心筋球)を、重い心不全の患者に移植する臨床試験(治験)で、心機能や症状の改善が確認されたと公表した。患者10人に実施し、安全性にも大きな問題はなかった。同社は来年中の製造販売承認申請を目指す。
治験は、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患の患者を対象に2022年から実施。移植する心筋細胞数に応じて、「低用量群」(5000万個)と「高用量群」(1億5000万個)の2グループに分け、血液を送り出す能力などを評価した。
低用量群の5人で移植前と1年後を比較したところ、4人で心機能の改善または維持が見られた。6分間に歩ける距離が150メートルから500メートルに延びた患者もいた。
高用量群の5人でも、移植半年後で心機能の改善傾向を確認。両グループとも、腫瘍形成や不整脈といった安全性に関する問題は認められなかった。
移植した心筋球が心臓内で定着・成長することで心機能改善につながると期待される。同社はデータの最終解析を行い、承認申請に向けた準備を進める。
2025年12月13日 14時32分
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