慢性炎症を制御するたんぱく質=原因の免疫細胞、組織にとどめる―千葉大発見、ぜんそくなど新治療法期待



ぜんそくや潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性疾患を引き起こす免疫細胞「T細胞」の一種が肺や腸などの炎症組織にとどまる仕組みは、「HLF」と呼ばれる司令塔役のたんぱく質(転写因子)によって制御されていることが分かった。千葉大の平原潔教授や木内政宏助教らが13日までに米科学誌サイエンスに発表した。新たな治療法の手掛かりになると期待される。

HLFはさまざまな遺伝子を調節する役割があり、骨髄で血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖や約24時間周期の概日リズムの維持など、生体の多様な機能を担う。しかし、炎症を起こすT細胞で働いていることが分かったのは初めて。

HLFの働きを直接抑えると副作用が大きいため、平原教授は「HLFがどのような炎症シグナルで誘導されるのか解明し、(流れを断つ新薬候補物質の)標的を絞り込みたい」と話している。2023年、在職中に病死した中山俊憲学長も研究成果に貢献し、論文の共著者となった。

肺や腸などはウイルスや細菌に一度感染すると、リンパ節から移動してきた免疫細胞群が退治するとともに「組織常在性記憶CD4陽性T細胞」が残留する。再感染時に素早く対処できる一方、炎症の慢性化要因になる。

木内助教らはマウスの慢性炎症の肺で同T細胞を調べ、HLFを生み出す遺伝子が予想外に多く働いていることを発見。働きを止めると、同T細胞が大幅に減少して炎症が抑えられた。HLFはたんぱく質の「CD69」や「S1PR1」を制御し、同T細胞を炎症組織に残留させることが分かった。

〔写真説明〕慢性炎症を制御するたんぱく質を発見した千葉大の木内政宏助教(左)と平原潔教授=10日、文部科学省

2025年12月14日 07時02分


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