能登半島地震で石川県の奥能登4市町が4月以降に行った災害復旧工事の入札のうち、25%で入札が成立しなかったことが分かった。背景に業者の技術者不足があり、応札ゼロのケースも目立つ。地震から1日で1年半を迎え、復興への影響が懸念されている。
各市町によると、今年度入札不調となったのは輪島市の入札16件中6件、珠洲市の21件中8件、能登町の39件中9件。穴水町は16件すべてで成立し、不調はなかった。4市町の不調件数の割合は、昨年度の13%を上回る。
珠洲市によると、入札が成立しないことは地震前はほとんどなかったが、最近は慢性化。ある保育園の復旧工事では昨年11月以降、4回の入札を経ても施工業者が決まらず、施設再開のめどが立たないという。
要因について、市の担当者は「少ない業者数の中で発注件数がどんどん増え、業者の施工能力が追い付いていない」と説明。珠洲建設業協会の明星加守暢会長も「地震後は従業員が減った。今年度からは県の復旧工事も増え、技術者不足はどうしようもない状況だ」と語る。
珠洲市では今後、入札による復旧工事が本格化する見通し。市の幹部は「復旧が遅れると復興がおのずと遅れる。復興が遅れれば若い人を中心に人口減少につながる」と懸念する。
建設業界に詳しいクラフトバンク総研の高木健次所長は「全国的に事務職や現場監督が増える一方、重機を動かす技術者や職人が減っている」と指摘。人材不足は自治体の側にも当てはまるといい、「資材価格が上がる中、業者も赤字リスクのある事業には手を出せない。適正価格の設定などで発注者自身も問われている」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕穴水町発注の道路災害復旧工事=6月25日、石川県同町
2025年07月02日 07時10分