4月に開設された「近畿大学病院死因究明センター」(大阪府大阪狭山市)で近く、司法解剖の受託が始まることが1日、分かった。近大では2021年2月、医学部法医学教室の主任教授(当時)による大学経費や検査料の詐取事件が発覚し、受託を中止していた。再開は4年数カ月ぶりとなる。
解剖を担うのは池田典昭センター長(68)。日本法医学学会理事長などを歴任し、多くの遺体の死因究明や解剖に携わってきた。大学の法医学教室ではなく、病院で司法解剖を行うのは新しい試みで、死因究明の信頼性向上や人材育成での効果が期待される。
同センターは医学部ではなく、近大病院の一部門として開設された。必要経費は病院の会計で一元管理されるため、以前起きたような不正は起こり得ないという。不正発覚まで解剖を受託してきた法医学教室は今後、研究と教育に専念する。
同センターでは、南大阪地域を中心に大阪府警の12署から司法解剖の要請を受ける。司法解剖するほど事件性が強くない場合に行う「調査法解剖」は既に受託を始めており、今年4~6月末までに40体の解剖や画像診断を行った。
東海大、弘前大、九州大などで計約4000体の解剖経験を持つ池田センター長は「こうしたセンターが病院内にできるのは珍しい。院内の医師やスタッフと連携できるのも望ましい環境だ」と話す。
解剖医の成り手が不足していることについては「法医学教室は、解剖だけでなく教育や研究もしなければならない。キャリアパスとしても、教授のポストが少ない」と指摘。「病院のセンターなら、臨床研修後に解剖をやりたい人も受け入れられる」と話し、人材育成にも貢献できるとの考えを示した。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに応じる近畿大学病院死因究明センターの池田典昭センター長=5月15日、大阪府大阪狭山市
2025年07月02日 07時11分