遠い融和、やまぬ政治的暴力=トランプ氏暗殺未遂から1年―米



【ワシントン時事】トランプ米大統領(79)が昨年の大統領選前、東部ペンシルベニア州の選挙集会で狙撃されてから13日で1年。大統領候補が九死に一生を得た暗殺未遂事件は、米社会に大きな衝撃をもたらした。だが、トランプ氏は当選後、暴力根絶や社会の融和を語ることなく、むしろ分断をあおる発言を繰り返す。政治的動機による暴力は、今も後を絶たない。

◇動機解明進まず

「とても危険な職業だ」。トランプ氏は6月27日の記者会見で、大統領が職務に絡んで命を落とす確率はカーレーサーやロデオ競技者より高いと、冗談めかして語った。

トランプ氏は事件で右耳を負傷し、聴衆にも死傷者が出た。その約2カ月後には南部フロリダ州のゴルフ場で、同氏を銃で狙ったとみられる男が拘束されている。

トランプ氏が事件について語ることは少ない。トーマス・クルックス容疑者=当時(20)=が現場で射殺されたこともあり、動機や背景の解明は進まないまま。事件を検証した下院タスクフォースは昨年末の最終報告書で、警備の不手際が重なったと指摘し「予防可能だった」と結論付けた。事件後、大統領警護隊(シークレットサービス)長官が引責辞任した。

◇分断あおる言動続く

その後も米国では、政治を背景とする凶悪事件が続いている。今年に入ってペンシルベニア州のシャピロ知事公邸が放火されたほか、首都ワシントンではパレスチナ支持者とみられる男がイスラエル大使館員2人を射殺。中西部ミネソタ州では民主党の州議会議員や家族が相次いで銃撃され、2人が死亡した。

プリンストン大の調査チーム「分断克服イニシアチブ(BDI)」によると、2024年に起きた政治的背景のある事件では、被害者と直接の利害関係がない個人や、緩やかに組織された「自警団」的な集団による犯行が大半を占めた。人種的・性的少数派、ユダヤ人、イスラム教徒やその関係者が標的となる傾向があり、今後は移民への攻撃も増える恐れがあるという。

こうした中でもトランプ氏は、不法移民や民主党員など特定の集団への憎悪をあおるような言動を重ねている。一方、21年1月に連邦議会を襲撃した自身の支持者らに対しては、粗暴犯や極右グループ構成員を含め全員を恩赦した。BDIは、敵味方を分けるような政権の姿勢によって「過激派グループの動きが活発化する恐れがある」と警告している。

【時事通信社】 〔写真説明〕銃撃直後、右手を上げるトランプ氏=2024年7月、米東部ペンシルベニア州バトラー(AFP時事)

2025年07月13日 07時13分


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