
漫画の海賊版サイトのデータ配信に使われるサービスが著作権侵害に当たるとして、出版大手のKADOKAWAと講談社、集英社、小学館が米IT企業「クラウドフレア」(本社サンフランシスコ)に計5億600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、東京地裁であった。高橋彩裁判長は著作権侵害のほう助を認定し、同社に約5億円の支払いを命じた。
クラウド社は、契約したサイトのデータを世界各地に置いた自社サーバーに複製して配信する「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)」と呼ばれるサービスを提供している。海賊版配信を巡り、CDN事業者の責任を認めた判決は初めて。
判決によると、海賊版サイトはCDNを使って約4000作品を無料で配信。出版4社は2020年4月以降、人気漫画「進撃の巨人」「ONE
PIECE」など4作品についてクラウド社サーバーからの削除を求めたが応じなかった。
クラウド社が配信主体かどうかが主な争点だった。高橋裁判長は、同社のサーバーに違法なデータを記録したのはサイト運営者で、同社は配信主体ではないと判断。ただ、CDNにより配信元サーバーへの負荷が大きく抑えられ、サイト運営者が効率的に多くのデータを配信できたと指摘した。
その上で、「海賊版であることは一見して明らかで、クラウド社は権利侵害を認識できた」と認定。出版4社から著作権侵害の通知を受け取って1カ月の時点でサービスを止める義務を負ったが怠ったとして、著作権侵害をほう助したと結論付けた。
出版4社は判決後の共同声明で「海賊版サイトの運営者が身元を隠して大規模配信を繰り返す現状において重要な判断。CDNの悪用防止に向けた一歩となることを期待している」とした。
クラウド社は「非常に残念に思う。控訴する予定だ」とするコメントを出した。
【時事通信社】
〔写真説明〕漫画の海賊版サイトを巡る訴訟の判決後、取材に応じる出版社側代理人の福井健策弁護士(中央)ら=19日午後、東京都目黒区
2025年11月19日 19時17分